アクアリウムは、きれいな水を保たなければ見て楽しむ価値がなくなってしまいますよね。
水槽内の水をきれいに保つには、定期的な水替えも大切ですが、水替えの頻度を落とし、水質を安定させるためにはろ過フィルターの設置も大切です。
ろ過フィルターはおもに7種類で、それぞれにメリットとデメリットがあります。
今回は、魚が快適で、かつ管理も楽にできるろ過フィルターを選ぶために、それぞれの特徴をやさしく説明します!
ろ過フィルターを選ぶ6つのポイント
ろ過フィルターを選ぶ際には、おもに6つのポイントに違いがあります。
飼育する魚や水槽のレイアウト、水槽のサイズなどで重視するポイントは変わるので、自分のイメージする飼育環境と、これらのポイントを照らし合わせて選んでくださいね。
ちなみに今回は、各項目をひとつ5ポイント、30点満点で数値化しようと思います。
物理ろ過能力
フンや餌の食べ残しを、ろ過材で取り除いてくれる能力のことです。
これがろ過フィルターのメインの役割だと思われがちですが、これはろ過フィルターの持つ能力の半分程度。
思っているよりフンや食べ残しは大量に発生するので、ろ過フィルターだけに任せてしまうとすぐ詰まってしまいます。
生物ろ過能力
フンや餌の食べ残しからは、アンモニアなどの毒になる物質が発生します。
これらはろ過材では取り除くことはできませんが、ろ過材に住み着いたバクテリアが処理してくれます。
フンや食べ残しを、細かく分解してくれるバクテリアもいますね。
バクテリアが住み着きやすいろ過材を使ったろ過フィルターは、生物ろ過能力が高いといえます。
メンテナンス性
ろ過フィルターは多かれ少なかれ、手入れが必要になります。
長期的に使うことを考えたら、ろ過材の交換や掃除など、なるべく簡単に行えるものがいいですよね。
水流の強さ
ろ過フィルターは、ろ過材に水を通してろ過するため、多少なりとも水流が発生します。
水槽内に水の流れがあることで水をよりキレイにできますが、強すぎると生き物にとって負担になったり、レイアウトを崩してしまうこともあります。
飼育する生き物に合わせて、適切な水流を作るろ過フィルターを選びましょう。
コスト(維持費)
ろ過材は消耗品なので、寿命が短く交換頻度が高いと維持費が膨らんでしまいます。
今回は、導入コスト(本体価格)も合わせて評価させていただきました。
作動音(静か)
ろ過装置でどうしても気になるのが音ですよね。
とくに寝室を兼ねた自室だと、うるさいろ過フィルターは死活問題になります。
以上、6つのポイントからそれぞれのろ過フィルターを評価していこうと思います!
外掛け式フィルター
水槽のふちに本体をひっかけて、水をモーターで循環させるろ過装置。
セット水槽によく付いてくるタイプのろ過装置ですね。
私も今のATフィルターになる前の、OT世代からテトラさんにはお世話になっています。
メリットとしては設置からろ過材の交換まで、初心者にも扱いやすいということです。
総合評価:18pt
ろ過能力はともに十分ありますが、ろ過材面積が少なく、目詰まりしやすいのでコストが少し気になりますし、ろ過材はパックになっているため、ろ過材のバクテリアは交換するたびにリセットされます。
水に手を入れなくてもろ過材を交換できるためメンテナンス性はかなり優秀ですね。
本体価格は1,000円台からと安いですが、専用ろ過材のコストが少し気になりますね。
水が滝のように流れるので水流があり、少し水音もすること、またモーターの振動がガラスに伝わりやすいので、静かとまでは言えないかもしれません。
外掛け式にオススメの使い方
これらの特性を加味して考えると、
- モーリーやグッピーなどを飼育する小型水槽
- エンゼルフィッシュを少数飼育する中型水槽
- こまめに水替えできる金魚水槽
などがおすすめです。
水槽を大きくしたり、魚の数が増えると少し扱いにくくなりますが、ろ過槽部分を改造して、生物ろ過能力を上げることもできます。
総合的に考えて、外掛け式フィルターは持っていて損はないろ過フィルターといえるでしょう。
モーター式投げ込みフィルター
本体を丸ごと水槽の中に入れてろ過するろ過装置。
空気で動作(エアリフト式)するものもありますが、形状も特性もけっこう違うので、べつべつに評価していきます。
水槽周りがすっきりして、かつろ過装置からの水漏れの心配がないので初心者にも安心ですね。
ちなみに、管理人は古くからGEXのイーロカの大ファン。
総合評価:18pt
水中でろ過材に直接水を充てる構造上、物理ろ過に使えるろ過面積は狭く、バクテリアもろ過材を交換するたびにリセットされます。
メンテナンス方法は製品にもよりますが、基本的には簡単なものの、いちいち水に手を入れなければいけないのが面倒です。
排水は基本的に水中に放出することになるので、水流はそこまで強くないですね。
なによりのメリットが、本体が丸ごと水の中に沈むので、相当作りが悪いか不具合でもなければ、数あるろ過フィルターのなかでも特に作動音が静かというポイントです。
モーター式水中フィルターにオススメの使い方
これらの特性を加味して考えると、
- 寝室に置く小型水槽に
- 水をあまり汚さない小型魚やエビの水槽に
- サブフィルターとして使用
などの使い方がおすすめです。
とくに筆者は、最後のサブフィルターとして評価が高いです。
水槽の中の水が滞らないよう回したり、ろ過槽にバクテリアを定着させるリングろ過材を入れたりして愛用しています。
初心者のうちはろ過能力も低いですし、扱いにくいと感じるかもしれませんが、上級者になるとむしろ再評価されるろ過フィルターかもしれませんね。
エアリフト式投げ込みフィルター
空気の力で水の流れを起こしてろ過するろ過フィルター。
エアポンプから送り込まれる空気が、水と一緒に浮き上がることで水流を作っています。
つまり別途エアポンプと、エアチューブも必要です。
エアリフト式の投げ込みフィルターといえば、水作エイトの右に出るものはいないでしょう。
最近の水作エイトはよりろ過能力をあげられるカートリッジや、底面フィルターとの接続など拡張性が上がっていますね。
総合評価:19pt
使用条件はやや限られるフィルターですが、ポイント換算すると高評価です。
まず物理ろ過ですが、空気が浮き上がる力で水流を起こしているので、そもそも吸うパワーがあまりないです。
生物ろ過に関しては、バクテリアは定着しやすいですが、やはり全交換しなければいけないカートリッジ式なのがデメリットですね。
ろ過材の交換にむずしい作業は必要なく、モーター周りの清掃も必要ないためメンテナンスも手軽ですね。
エアポンプやエアチューブも用意しなければいけないデメリットはありますが、すべてセットでも2,000円あれば十分そうので、導入コストは安め。
音に関しては、どうしてもエアポンプの作動音が気になりますよが、最近では音の小さいエアポンプがあるので、検討してみてもいいかもしれません。
エアリフト式投げ込みフィルターにオススメの使い方
エアリフト式の投げ込みフィルターが十分機能する環境は、少し限られています。
- 大きな汚れを出さない魚の水槽
- 物理ろ過に強いフィルターのサブに
- 安定して酸素を取り込みたい水槽
よく金魚の水槽に使われていますが、正直なところ、大量にフンをする金魚にはあまり向かないような気がします。
小型魚などの水槽なら、透明度の高い水にしてくれるでしょう。
空気を送り込むことで安定して酸素を取り込めるようになるので、酸欠に弱い魚がいたり、やや過密気味の水槽のサブフィルターとしてもよさそうですね。
スポンジフィルター
おもにエアリフト式で、ろ過材のスポンジが露出した構造のろ過フィルター。
昔は少しマニアックなろ過フィルターでしたが、レッドビーシュリンプなどエビ水槽の人気で一般的になりましたね。
スポンジフィルターでよく流通しているものといえばテトラ社のブリラントフィルターですね。
私も基本的にはスポンジフィルターはブリラントフィルターを使っています。
ベタの繁殖用水槽だと、スドーさんのベタ用スポンジフィルターなんかも使います。
総合評価:20pt
生物ろ過は期待できますが、物理ろ過を任せて目詰まりすると生物ろ過もしなくなってしまいます。
手を水に入れるわずらわしさはあるのもの、スポンジを引き抜いて洗う、もしくは交換なのでメンテナンスは非常に簡単です。
水流もエアリフト式で強くなく、煙突のような排水口で水面付近に出すので、水流はほとんど起こりません。
本体の価格はエアリフト式にしては高いですし、エアポンプとエアチューブも必要ですが、大切に使えばスポンジは年単位で使えるので、ランニングコストが安いです。
音に関しては、エアポンプを使うので少し気になるので、寝室などでは静穏設計のエアポンプがおすすめ。
スポンジフィルターにオススメの使い方
ポイントこそ高いものの、やや偏った性能なので使い道は限定されます。
- 小型魚メインの小型~中型水槽
- エビ水槽
- 繁殖用水槽
小型魚であれば詰まらせるほど水を汚さないのでスポンジフィルターだけでOKですね。
生物ろ過が重要で、水流を好まないビーシュリンプの水槽にももちろんおすすめです。
また、稚魚を吸い込んでしまうリスクが限りなく低いので、繁殖用水槽にもよく使われています。
こういった条件さえ満たせば、かなり有能なろ過フィルターといえるでしょう。
底面フィルター
砂利の下にろ過装置を仕込んで、砂利ごとろ過材にするろ過システム。
モーターを接続したり、上部フィルターの給水口に接続する場合もありますが、エアリフト式が多いです。
個人的によく使うフィルターで、価格も安くメリットも多いですが、扱いにくさもあります。
ニッソーさんのバイオフィルターは斜めにスリットが入っているので目詰まりしにくく、サイズのバリエーションも多いのでお勧めです。
総合評価:18pt
グラフを見ればわかる通り、ちょっと偏った特性を持つフィルターですね。
ろ過材は砂利なので物理ろ過は苦手ですが、もともとバクテリアが住み着きやすい砂利をろ過材にしているので、生物ろ過は優秀です。
ただ、その砂利に埋めることでメンテナンスは大変で、目詰まりしたときはレイアウトもすべて取り出して掃除しなければいけません。
水流は、エアリフト式ならかなり弱いので気にしなくてもOKですね。
コストも、水槽が大きくなれば高くなりますが、基本は安いです。
音は、エアリフト式の場合はエアポンプの動作音が気になりますね。
底面フィルターにオススメの使い方
メリットを伸ばす使い方としては、
- エビ水槽のメインろ過
- 水槽内のスペースが少ない小型水槽
などです。
エビ水槽ではソイルを使うので、ソイルの中に有害物質がたまらないようにしてあげる効果は大きいですね。
エアリフト式の場合、水槽内にはパイプが一本立つだけなので、小型水槽でも邪魔になりません。
物理ろ過は弱いので、外掛け式フィルターなどと組み合わせて使うとより効果的です。
上部フィルター
水槽の上に本体を設置し、モーターで水を持ち上げて、ろ過槽から水をあふれさせることで水を循環させるタイプのろ過装置。
個人的には60㎝水槽ならこれ、というイメージがありますね。
水槽の上に乗せる特性上、水槽のサイズに合わせて選ぶ必要があります。
また小型水槽用の上部フィルターがほとんどないので、大きい水槽でしか使えないフィルターでもありますね。
個人的にはザ・上部フィルターといえばGEXさんのデュアルクリーン600SPで、おそらくこれまで4本は買っていると思います。
総合評価:21pt
ろ過槽がかなり大きいので、物理ろ過、生物ろ過それぞれ優秀です。
生物ろ過、物理ろ過、どちらを重視するかは、それぞれろ過材の組み合わせで変えられるのも魅力的ですね。
メンテナンスも、上蓋を開ければすぐにろ過材にアクセスできるので簡単ですし、構造がシンプルなので、モーターなどの手入れも簡単です。
水流に関しては、各社工夫してはいますがどうしても排水口付近は流れが強いです。
ただし、おもに45㎝水槽以上で使われるフィルターなので、そこまで気にするほどではないでしょう。
本体は3,000円程度で初期投資も少なめ、ろ過材も各社から販売されて安いものから高いものまであり、交換するのも表面のウールマットが主なのでランニングコストも優秀です。
作動音に関しては、外掛け式フィルターと変わらないか、やや大きいかなという印象です。蓋が振動で震えてカタカタ言うのが個人的にはちょっと気になりますね。
上部フィルターにオススメの使い方
デメリットもあまりなく、使える用途はとても多いですね。
45㎝以上のさまざまな水槽
- 45㎝以上のさまざまな水槽
- 肉食魚水槽
- 海水水槽
オールガラス水槽は負担がかかって欠けてしまったり、割れてしまうこともあるので要注意ですが、基本的にはいろいろな水槽に適応します。
小型魚が多いならストレーナスポンジなどを付けるといいですね。
ろ過能力が高いので海水水槽にもおすすめですが、水しぶきが飛ぶと塩害のリスクもあるので工夫して使ってくださいね。
外部フィルター
水槽の外にタンクを設置し、そのタンクにホースで水を流し込んでモーターで水槽に戻すことでろ過するタイプのろ過装置。
上級者向けというイメージがありましたが、最近小型水槽用の外部フィルターも増えていて、使用する方も多くなりましたね。
私が勤めていた時に一番売れたのは、GEXさんのメガパワー2045です。
新発売ということもあったと思いますが、低価格で水漏れもしにくく、しっかり外部フィルターとして出来上がっていて、私も一時期愛用していました。
あとは外部フィルターといえばエーハイムは外せませんね。
よくできた外部フィルターで、拡張性も高いのが魅力でしょう。
私もエーハイム500をいくつか持っています。
総合評価:19
物理ろ過は構造上向いておらず、頻繁なメンテナンスにも向いていないのであまり頼りにしないほうが吉。ストレーナースポンジである程度除去するのがおすすめです。
生物ろ過能力は高めですね。好みのろ過材で自由に性能を変えられるのもうれしいです。
いちいちホースを外し、タンクを開けなければいけないのでメンテナンスはかなり面倒です。
水流はもともとそこまで強くなく、シャワーパイプやリリィパイプなども使えるので、水草などにも優しいですね。
コストは、どうしても本体価格が高いこと、ろ過材も多いので費用はどうしても掛かってしまいます。
音は、タンク内の空気をしっかり逃がせば、基本的にうるさいと感じるほどのものではありません。
外部フィルターにオススメの使い方
デメリットも大きいため総合評価は低いですが、使い道自体はとても多いです。
- 海水水槽
- 水草水槽
- その他、中・大型肉食魚以外の水槽
海水水槽は生物ろ過能力が必要なので、外部フィルターをメインのろ過フィルターに使う方が多いですね。
水草水槽では、水流や気泡でCo2が逃げると水草の育成が悪くなるので、水流が弱くCo2を逃がしにくい外部フィルターが人気です。
肉食魚は物理ろ過能力が必要なのでおすすめできませんが、かねがねその他の魚にはおすすめできるろ過フィルターだと思います。
オーバーフロー
モーターで水槽に水を送り、あふれた分をパイプを通して、水槽の下段にあるろ過槽に落とすろ過スタイル。
これは、実際にはろ過フィルターといよりも、水槽一式そのままがオーバーフロー用なので、ちょっと毛色が違いますね。
海水魚用によく使われるろ過システムで、個人的にはブルジョアなイメージがあります。
ちなみにミニミニオーバーフロー水槽を自作したこともあるので、興味があればぜひ。
総合評価:22pt
まとめていえば「高いだけある」といった感じですね。
ろ過能力に関しては、水槽と同等のろ過槽にろ過材を自由に入れられるので、どうにでもできるといった感じです。
メンテナンスも基本はむずかしくないですが、怠るとろ過槽の底に泥潟あるので、大掃除になってしまいます。
水流も基本的にそこまで強くないので扱いやすいですね。
唯一のデメリットともいえるのが予算で、専用水槽、専用濾過槽、専用水槽代、場合によっては配管やモーターも別途用意しなければいけません。
オーバーフロー水槽にオススメの使い方
オーバーフロー水槽のシステムは、基本的にどんな水槽にもおすすめなので、逆に注意したほうがいい水槽を紹介します。
まずは小型魚を飼育する水槽ですね。あふれて落ちる水に吸い込まれやすいので、ガードをしっかりしなければいけません。
どじょうやうなぎ、貝やエビなども、濾過槽に落ちてしまうこともあるので要注意。
注意点としてはこれぐらいでしょうか。
例外は基本的にどんな水槽に使ってもOKですね。
レイアウトに制約ができるので水草水槽などでは嫌われますが、うまく隠してオーバーフロー水槽で水草水槽を作っている人もいます。
予算だけがネックですが、かねがね性能は高いろ過システムだと思います。
完璧なろ過フィルターなんてないよ!
というわけで今回はろ過フィルター、ろ過システムについての解説でした。
まとめると、それぞれメリットがあり、デメリットも存在します。
つまりは「これ買えば絶対OK」なんてろ過フィルターはないので、ある程度の妥協も必要です。
まずは飼育する魚の種類から、その魚にはどういった環境が適しているのかを考えて、それぞれのろ過フィルターの特性から最適なろ過システムを作ってくださいね。