熱帯魚も生き物なので、飼育している中で、私たちと同じように病気になることもあります。
特に身近な病気として「白点病」が挙げられ、長くアクアリウムを楽しんでいる方はほぼ確実に治療した経験があるほどです。
そこで今回は、アクアリウムビギナーの方に向けて、白点病の基礎知識から治療法、治療薬などを解説します。
白点病の基礎知識
白点病は熱帯魚のかかる病気のなかでもごくありふれたもので、私自身熱帯魚販売店に務めていた経験も含め、何百匹も白点病の治療をしてきました。
特にお店への入荷直後や、買った魚を自宅に連れ帰った後など、ちょっとしたきっかけでも起こるため、長くアクアリウムを楽しんでいる方からすれば、軽い病気というイメージを持っている方も多いでしょう。
しかし熱帯魚の病気のほとんどは命に関わるため、甘く見ず、しっかりと知識を付けたうえで治療を行ってあげましょう。
白点病の症状
白点病はその名の通り、魚体やヒレなどに白い点が付く病気で、場合によっては全身を覆うように白い点が付いていることもあります。
初期においては魚の行動にはあまり影響せず、特に白い魚では気付きにくいこともあるでしょう。
症状の一つとして、魚が体に付いた病原体を落とすために、水槽の底に体当たりするような行動を見せることもあります。
季節の変わり目などで発症しやすいので、日ごろからよく魚の様子を観察して、早めに発見してあげることが大切です。
海水魚と淡水魚では白点病の病原体(治療法)が違う
白点病を引き起こす病原体は、海水魚と淡水魚で違います。
ベタや金魚、メダカなど淡水魚においては、ウオノカイセンチュウという寄生虫が病原体です。
水槽の中に必ずいると言っていいほどありふれた寄生虫なのですが、魚が体力を落としたタイミングで寄生し、魚からエネルギーを補給して水槽内で繁殖し、水槽内で爆発的な感染を起こすこともあります。
フグやクマノミ、ナンヨウハギなどの海水魚における白点病も寄生虫が病原体ですが、クリプトカリオン・イリタンスという別な寄生虫が原因です。
淡水性白点病と同じく、水槽内にはほぼ確実に存在し、魚に寄生して繁殖を繰り返します。
似た症状、似た性質を持つ2つの白点虫ですが、適した薬や温度など環境への適応が違うため、治療法も変わります。
とりわけミドリフグのような汽水水槽で飼育している魚の場合、どちら白点虫に感染しているかわからないこともあるので、2つの治療法を施す時間的余裕を確保するため、やはり早期発見が重要です。
白点病が悪化するとどうなる?
白点病は早期発見し、早期に的確な治療を行えばほぼ確実に治る病気です。
実際、筆者の飼育する魚で、ここ10年間白点病で死んだ魚はいません。
ただし放置すれば魚の体力をどんどん奪い、繁殖し、魚にどんどん寄生して、エラなどに寄生すれば死に至る病気でもあります。
白点病の治療法について
白点病の治療については、飼育している魚が海水魚なのか淡水魚なのか、また重症なのか軽症なのかによって、取るべき治療法が変わります。
詳細は別途記載していきますが、今回はまず取るべき基本的な流れについて解説します。
自然治癒する場合も?
稀に聞く話ですが、白点病を発見したものの放置して完治したという事例もあります。
実際ない話ではなく、気温の変化などで一時的に水槽の環境が悪化し、魚の免疫が落ちたために白点病を発症したけど、その後環境が改善されて自己免疫で治癒するという可能性もあります。
しかしそれはかなり珍しいパターンで、放置すればたいていは悪化し、いずれ死んでしまったり、水槽全体に蔓延してしまうこともあるので、見つけたらすぐに相応の治療を行う方が良いでしょう。
淡水魚の白点病治療
温水浴 | 塩水浴 | 薬浴 |
〇 | ◎ | ◎ |
淡水魚の場合、ヒレなどに症状が見られるような初期であれば、塩水浴が魚への負担も低く、低コストでもあるのでおすすめの治療法です。
各魚種の塩分への耐性にもよりますが、0.3~0.5%の塩水浴で治療が望めます。
薬浴はより効果的で、全身を覆うように進行してしまった白点の場合、塩浴が望ましいでしょう。
ウオノカイセンチュウは高水温に弱いため、30度程度の水温に調整することも有効ですが、水温を安定させることがやや難しく、魚種によっては高水温のダメージのほうが大きくなってしまうこともあります。
塩浴、薬浴いずれにせよ水温を安定させることは重要なので、最低限その魚の適正水温内で治療をするようにしましょう。
海水魚の白点病治療
低温浴 | 淡水浴 | 薬浴 |
△ | 〇 | ◎ |
淡水魚を飼育している方の場合、海水魚の白点病を同じ方法で治療しようとする方も多いですが、基本的には真逆と考えていいでしょう。
まず水温に関してですが、 クリプトカリオン・イリタンス の場合、高水温を好む傾向にあります。
一般的な熱帯魚用ヒーターは クリプトカリオン・イリタンス が活性化する温度に近いため、できればサーモスタット付きヒーターなどに変え、25度弱に設定するようにしましょう。
初期では水槽用クーラーなどを使った低水温のみで治療することも可能ですが、水温低下による免疫力低下で、別な病気になってしまうこともあるので、低水温に弱い魚種は要注意です。
海水魚ではもともと塩分濃度の高い水槽で飼育するため、塩水浴はできませんが、逆に淡水にすることで クリプトカリオン・イリタンスを駆虫することもできます。
筆者が中症度のハリセンボンを治療した際は、淡水浴で順調に治療できました。
ただし長期的な淡水浴はいわずもがな負担が大きいため、初期の治療や、水槽をどうしても別途用意できない場合などに行う方法と考えたほうが良いでしょう。
薬浴が最も効果的ですが、淡水魚の白点病の治療薬とは違うものが必要で、また比較的強い薬を用いる必要があります。
淡水魚ももちろんですが、海水魚においては早期の発見と、予防がより重要と言えます。
ちなみに、おすすめはしませんが、海水魚のごく初期の白点病においては、水換えの頻度を上げることでも完治することがあります。
白点病の治療薬
淡水性白点病 | メチレンブルー グリーンFクリアー ニューグリーンF グリーンFリキッド アグテン ヒコサンZ など |
海水性白点病 | グリーンFゴールド顆粒 白点キラー ICH など |
各薬品については、必ず使用上の注意をよく読み、指定に従って使用してください。
白点病の予防法
白点病に限らず、魚の病気はかからせないことが何より重要です。
しっかり対策しておけば、もしかかった場合も進行が遅い場合もあるので、白点病が見つかったら、一度飼育環境を見直すことをおすすめします。
水温の管理
筆者の経験上、白点病に掛かるきっかけで最も多いのが、水温の変化があったタイミングです。
ショップ勤めの時は、秋口に必ずと言っていいほど問い合わせが入るので、魚病薬と食塩の在庫を増やすほどでした。
日本は気温の変化が激しいので、特に季節の変わり目などは注意して温度管理するようにしましょう。
水質の悪化を防ぐ
汚い水槽では白点病が活発になり、発症するリスクも上がります。
水換えは基本として、十分なろ過能力のあるフィルターを設置し、定期的に砂利の掃除も行うようにしましょう。
筆者の経験上、海水も淡水も砂利の汚れが限界に達したことが白点病として現れることもあります。
発症した魚の早期隔離
白点虫は魚に寄生することで活動を活発にし、水槽内に蔓延することもあります。
一匹発症すると芋ずる式に水槽内に広がることもあるので、まずは発症した魚を隔離することが重要です。
もし可能であれば、水槽のトリートメントを行うことで、ほかの魚の発症を予防することもできます。
最後に
白点病は熱帯魚飼育において最もよく発症する病気でもあるので、予防と治療はしっかり覚えておくべき病気です。
死に至る病気ではあるものの、早期発見と的確な治療で、高い確率で治療してあげることができます。
もちろん発症させないのがベストですが、水温管理、塩浴、薬浴と、病気治療の基本で治療できるので、発症した際にしっかり治療することで、今後の病気治療の際にも合わせず対応できるようになるかと思います。
今後もやさしい熱帯魚さんサテライトでは熱帯魚の病気について解説しますので、お困りの際は参考にしていただければ幸いです。