ベタの大敵「尾ぐされ病」尾腐れ病の原因や治療法をプロが解説

ベタの大敵「尾ぐされ病」尾腐れ病の原因や治療法をプロが解説

ベタは改良によってヒレがとても長くなった熱帯魚です。

それが特徴であり魅力でもあるのですが、それによってある病気のリスクも上がりました。

それが「尾腐れ病」と呼ばれる病気です。

今回はベタ飼育と切っても切れない尾腐れ病について、元熱帯魚店員でベタブリーダーの経験もある私が解説します。

まず覚えておくべき尾腐れ病についての基礎知識

ベタ 水草

ベタが尾腐れ病になってしまい、治療するにあたって、まずは尾腐れ病について覚えておくべき基礎知識がいくつかあります。

まずはどんな原因でどうなってしまうのか、少し怖い話になりますが覚えておいてくださいね。

菌に感染して起こる病気

熱帯魚の病気には、主に細菌によって起こるもの、寄生虫によって起こるものがありますが、尾ぐされ病はカラムナリス菌によって起こる病気です。

カラムナリス菌がヒレに感染し、ヒレを溶かしてしまうことで尾ぐされ病、口に感染すると口ぐされ病となります。

カラムナリス菌がたんぱく質、つまり魚のヒレを溶かし、放置すると魚が死んでしまう病気です。

細菌と寄生虫では治療のアプローチが違い、病原菌によって治療薬が変わるので覚えておきたいですね。

とくにカラムナリス菌においては、水温や塩分濃度にかかわらず活動できる細菌なので、ほかの病気治療とはアプローチが変わることもあります。

水質の悪化などが原因

カラムナリス菌は珍しいものではなく、たいていの水槽にすでにいるものと考えていいでしょう。

そのカラムナリス菌がなぜ突然感染して発症するかというと、最終的にはベタ自身の状態による部分が大きいです。

例えば水温の変化(低下ではなく変化)であったり、水質の悪化、傷が原因になることもあります。

細かくは後ほど詳しく解説しますが、再発も非常に多い病気なので、治療と合わせて飼育環境の見直しと改善も行いましょう。

ヒレがぼろぼろだからといって尾ぐされ病ではない

ヒレがボロボロだからといって、かならずカラムナリス菌によって起こった症状だとは限りません。

例えばレイアウトやフィルターに巻き込まれたことでヒレを怪我しただけだったり、まれに自分でヒレをかじってしまうこともあります。

これらは尾ぐされ病と違うので治療のアプローチが違いますが、尾ぐされ病として治療を始めてしまうと、治療自体がベタの負担になります。

なので、治療に入る前にしっかりと原因が病気なのかを見極めることも重要ですね。

主な違いとしては、スッパリと切ったようにヒレが欠損する怪我に対し、尾ぐされ病は欠損部分が溶けたようになり、水かビ病を併発して切り口にモヤが見えるなどの違いがあります。

尾ぐされ病の治療法について

ベタ クラウンテール

ベタが尾ぐされ病になったときの治療法についてですが、これは様々なアプローチがあり、ベタ自身の状況や、水槽の環境によっても適切な方法が変わります。

なるべくそれぞれの方法のメリットデメリットを紹介しますので、現在のベタの様子や、水槽の環境に照らし合わせたうえで、総合的に環境を整えて治療を行ってあげてくださいね。

基本は投薬(+塩欲・温度管理)

最初に結論を言うと、ベタの尾ぐされ病治療は、投薬治療が基本になります。

そこに複合的に、いわばサポートとして塩欲と温度管理を行います。

それには理由があるので、治療の効果を確実にするために、詳しく解説していきます。

投薬治療

尾ぐされ病の治療の基本となるのが、魚病薬を使った治療です。

いわずもがな、病原体であるカラムナリス菌への効果がある薬を使い、水槽内及び魚体に付着した病原体自体を減らすという方法になりますね。

使う薬は「観パラD」「グリーンFゴールド」「エルバージュエース」などが有効とされています。

デメリットとしては、薬は病原体だけでなくベタ自身へのダメージも大きいこと、薬を投入した水槽は水質の管理が難しくなるなどがあります。

薬によるダメージに関しては、分量を守ることで最低限にできますが、薬を入れた水槽の水は劣化が激しく、新たな病気の誘発や、水質悪化による死亡を避けるために水換えも定期的に必要になります。

水換えする場合には、水温を合わせるのは基本として、薬の分量を、すでに水に溶けている分量を加味したうえで計算するなど、細かな管理が必要になります。

塩浴治療

淡水魚の病気治療で広く使われているのが、食塩などを利用した塩浴治療です。

塩による殺菌効果と、魚自身の体力を落とさない効果を狙った治療法ですね。

具体的には、飼育水に0.3~0.7%程度まで食塩などを溶かし、塩分濃度を上げる方法になります。

しかしこれには問題があり、カラムナリス菌は塩分に対する耐性が高く、殺菌効果は望めないということです。

0.0~0.5%までの塩分濃度ではカラムナリス菌の活動に影響がないと言われていて、それ以上に上げれば効果はあるのですが、塩分濃度が高くなるとベタ自身への負担も大きくなるため、実質的塩によるカラムナリス菌の減少は見込めないと考えていいでしょう。

ただし、塩分濃度を上げることで体液の流出などを抑えて、ベタの体力を落とさない効果はあるので、ベタ自身の自然治癒能力を生かすという目的で、塩浴による尾ぐされ病の治療を行う方もいます。

これらのことを考えると、カラムナリス菌が完全にベタのヒレに巣喰ってしまった尾ぐされ病の末期に関しては効果が見込めない可能性が高いため、尾ぐされ病の初期、または尾ぐされ病なのかヒレの切れなのか判断できないときに、0.5%までの塩分濃度で経過を見るという方法に有効かなと思います。

水温による治療

これも熱帯魚の病気治療に広く行われる治療法ですが、水温を上げることで病原菌にダメージを与えるとともに、自然治癒能力を上げて回復を促すという方法もあります。

ただし、これにも問題があり、カラムナリス菌は30度を超えても活動できる細菌であるため、水温によるカラムナリス菌の減少は見込めないということです。

逆に水温の変化でカラムナリス菌の活動を抑えるには、35度以上、もしくは5度以下にしなければいけないと言われているため、ベタへの負担を考えると水温でカラムナリス菌の活動を抑え込むことは不可能と言えます。

しかしながら、カラムナリス菌への影響はないとはいえ、ベタ自身の体調を整えるためには水温管理は重要です。

塩浴で様子を見るときも、薬欲を行うときも、ベタの体調を崩さないための水温管理を行う必要はありますが、それだけでの治療効果を狙うのは難しいことは覚えておきましょう。

ベタの尾ぐされ病の原因と予防

ベタ ショウベタ ベールテール

熱帯魚の病気については、病気をそもそも発症させないことがもっとも効果的な対策です。

ヒレの長いショーベタは、数ある熱帯魚の中でも尾ぐされ病にかかりやすい熱帯魚であるといえますが、しっかり管理すれば、相当運が悪くなければ発症しないレベルまでに抑え込めます。

尾ぐされ病は再発しやすいといわれる所以は、どちらかといえばベタの特性よりも飼育環境のほうが大きいため、一度発症してしまった方は、一度飼育環境を見直し、予防するようにしましょう。

これから紹介するポイントは、ここ数年尾ぐされ病を発症させていない私の飼育方法をもとにしたものですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

水温管理

水温は熱帯魚飼育の基礎です。

ベタはボトルで飼育できるという情報が先立ち、ボトルのまま販売されてそのまま飼育している人も多いですよね。

それでは実質的に水温の管理ができません。

水温が適切に保たれていないとベタの免疫力が落ち、尾ぐされ病をはじめとした病気になってしまう確率が上がります。

室温で水温を保つのも一つの方法ですが、水温は安定させることが重要なので、不安定になりがちな室温に頼るのはリスキーだとも考えられます。

なので、やはり水温管理がしやすい小型水槽で飼育し、ヒーターでの保温をすることが一番ではないかと思います。

水質管理

私がベタを飼育するときに、とくに注意しているのが水質の管理です。

水質と一口に言ってもいろいろな基準がありますが、私が特に注意しているのが魚の体表への影響です。

人間でも、お風呂に入るとき真水の一番風呂は、上がったときに肌がかさつく感覚を覚えるかと思います。

魚もこれと同じで、浸透圧などの関係で体表が弱ってしまうことがあり、その状態だと病原体に対する抵抗力が落ちてしまうことがあるんですね。

なので、私はまずは浸透圧を上げるために塩(私は海水の元ですが、食塩でOK)を入れています。

0.1%程度のごく薄い塩水なのですが、これだけでもするとしないとではベタの状態が大違いになるのでおすすめです。

もし予算があるなら、アクアセイフなどの粘膜保護剤や、マジックリーフなども効果があるので、導入してもいいかもしれませんね。

水換え時の注意

すでに紹介したポイントとも共通するのですが、水換え後はベタが体調を崩す一つのタイミングです。

水換えはもちろん水質悪化を防ぐために重要な手入れの一つなのですが、水換えでは紹介した「水温」「水質」どちらも変化してしまいますよね。

それによって免疫力が落ちてしまい、病気になることが少なくないのです。

まず水温に関しては、冷たい水は避け、飼育水に近い水温の水の塩素を抜いて使うのが理想的です。

夏場であれば、汲み置いた常温の水でも水温の変化は少なくなりますね。

水質に関しては、なるべくこまめに少量ずつの水換えを行うことで、水質の変化を減らし、魚への影響を最小限にすることができます。

塩を入れている場合は、減った分の塩を補充するといいですね。(蒸発によって塩分濃度が上昇していることも加味して追加しましょう)

まとめ

ベタは愛嬌のある魚で、ペットに近い存在にもなる魚です。

なので、病気になって調子を崩してしまうと、とても心配ですよね。

尾ぐされ病は早期発見すれば治療もそう難しくないですし、飼育環境を整えてあげることで発症するリスクを限りなくゼロにできる病気です。

ベタにも飼い主にも無用な負担をかけないように、万が一の場合にも早期発見してあげられるよう、日々の管理を徹底してあげてくださいね。

やさしい熱帯魚さんサテライトではベタについての情報を他にも紹介していますので、興味のある方はぜひまた遊びに来てくださいね。

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