久々に、悩めるアクアリストのみなさんからの疑問に答えるQ&Aのコーナーです。
今回は、ベタを飼育する水質についての質問をいただきました!
ベタ好きということで質問させてください!
半年ほど前にベタを飼い始めて、優しい熱帯魚さんも参考にしながら、いまのところとても調子がいいです。
ですが、いろいろ調べていると、「ベタにはアルカリ性の水がいい」と目にして迷っています。
いまはソイルとマジックリーフで酸性に傾けているのですが、アルカリ性にしたほうがいいのでしょうか?
アルカリ性が適しているのも事実ですが、ベタの調子を見ながらでいいと思います!
25歳女性からの質問でした。
いつも見てくださっているとのことで、とてもうれしいです。
さて、ベタに適した水質ですが、たいていの書籍では、酸性~中性となっていることが多いですよね。
しかし、実際にはアルカリ性のほうが適しているベタがいるのも事実です。
でも、質問者様も酸性で飼育していて調子がいいとのことですし、私も酸性で飼育したからと言って死なせてしまったことはありません。
いったいどういうことなのか、今回はベタとアルカリ性の関係について解説していきます!
ベタの住む環境は?
このサイトのセオリーでもありますが、魚の飼育の基本は、その魚の生息地の環境を知ることで導き出すことができます。
ですが、ベタの原産地となるとちょっと複雑で、一筋縄では語れません。
野生の生息地は?
ベタの野生種、いわゆるワイルドベタは、メコン川流域の湿地帯など、比較的流れの弱い場所に生息しています。
この地域は酸性の水がほとんどなので、野生種は酸性の水で生きているのは間違いありません。
余談ですが、改良ベタが流出し、多くのエリアで遺伝子の混濁が起こっていて問題になっているとか。
ベタファームの飼育環境
改良ベタは長い年月をかけて、ベタスプレンデンスを改良した熱帯魚です。
もちろん飼育下で血統を維持しなければ形質を失うので、ある程度管理されて繁殖させています。
このため、よく目にするきらびやかなベタたちは、ベタファームと呼ばれる養魚場出身でまちがいないでしょう。
養魚場では大量の瓶を使い、大量の水を使用します。
水道が整備されていないことも多く、ほとんどのファームでは井戸水を使っています。
生まれてから出荷されるまで、井戸水の水質で育成されるため、その井戸水の水質に慣れているというわけですね。
アルカリ性の水を好むベタがいるのは事実
さて、本題のアルカリ性の水についてですが、結論から言えばアルカリ性を好むベタがいるのは間違いありません。
しかし、すべてのベタがアルカリ性の水を好むかというと、それはちょっと別なお話です。
ベタファームの立地に起因する
ベタはタイが最盛地で、露店のように小さなベタファームがあるエリアもあります。
最終的にはバンコクを経由して世界中に旅立つわけですが、ベタファームはタイの各地にあります。
わたしがショップ勤めだったときに代理店を通して取引していたのはナコンパートムのファームだったはず。
で、このベタファームの立地が重要で、場所によっては地下水に海水がしみだしてくる場所があるんだとか。
たしかに、バンコクなどタイの東北部では洪水で海水が混じった水が浸水し、塩害も問題になっています。
つまり、アルカリ性である海水由来の井戸水で育ったベタは、アルカリ性で飼育するほうが水質のギャップが少なくなるというわけですね。
しかしタイ全域が塩害に犯されているわけではないため、すべてのベタがアルカリ性の水で育成されたわけではありません。
タイ国内でも水質に違いがある上に、たとえば最近はインドネシアで繁殖させた個体も多いですし、一部では国産ベタも見かけますよね。
これがベタの水質調整が難しいところで、 あまり原産地やファームまで書いていないことも多いです。
つまり、かならずアルカリ性が適しているというよりは、アルカリ性を好むベタも多いという認識のほうが正しいのではと思います。
ワイルドベタには御法度!
ひとつだけ断言できるとすれば、ワイルドベタは基本的に弱酸性の水を好むということ。
ワイルドベタに関しては、タイのファームで類題して改良するというよりは、ワイルド個体をそのまま流通させるか、ワイルド個体を細々と繁殖させ、それが流通しているのが多いのではと思います。
つまりは本来の水質である弱酸性を好む体質は変わらずに、そのまま残っていると考えたほうが自然ですし、ブラックウォーター気味の水で育てていて問題が出たという経験も、話も聞きません。
アルカリ性の水がいいというのは、あくまで改良ベタ、ショーベタに限った話だということは覚えておきましょう。
塩を入れるとなお効果的?
私のベタ飼育では、基本的に生涯を通して塩を入れています。
これはまだネットがなかった時代から経験に基づくものですが、最近では専門店の方も常時塩を入れておくことを推奨していますね。
あくまで予想ではありますが、その理由を解説していきます。
海水が染み出る=塩分濃度も濃い
アルカリ性の井戸水が海水から由来するものだとすれば、塩が混ざっていてしかるべきです。
その影響で塩害が起こっていることはすでに紹介したとおりですが、海水に比べればごく少量とはいえ、塩分濃度が高くなっているのは間違いないでしょう。
それに慣れた、というのも考えられなくもないですが、アルカリ性の水に慣れて暮らしていることにも由来しているのではと思います。
アルカリ性を好む魚が酸性の水で暮らすと体内の塩分濃度を保持できず、調子を崩しやすくなります。
仮にアルカリ性の水でなくても、ごくわずかに塩を入れておくことで、これを補う効果があるのではないかと思っています。
実際、入荷時に色ぬけして戻らない個体も、塩を入れることで色が戻る場合がありました。
常時塩水だとバクテリアの管理も難しくなるので、塩浴のように高い塩分濃度ではなく、0.5%程度の濃度でOKかと思います。
海水の元がおすすめ?
熱帯魚飼育で塩浴させる場合は食塩を用いることが多いと思います。
わたしもベタの水槽に塩を入れるときは食塩を使っていましたが、専門店では海水の元を推奨している場合もありますね。
もともと食塩で問題なく飼育できていましたが、私もいまは海水魚用の海水魚用の海水のもとを少し失敬して、ベタに使っています。
ベタの飼育水を水質調整する方法
必ずしもアルカリ性が必要なわけではありませんが、水質調整する知識を持っておいて損はありません。
とくにアルカリ性を維持する場合、淡水魚をメインに飼育していると、あまり覚えがない場合も多いですよね。
今回紹介する方法はグッピーなどアルカリ性を好む淡水魚にも応用できるので、ぜひ覚えておいてくださいね。
サンゴ砂まで必要?
アルカリ性の飼育水を作るときは、サンゴ砂を使うのが手っ取り早いです。
しかしベタにそこまで必要かと言われれば、個人的にはそこまでしなくていいのではと思っています。
実際、わたしも基本はベアタンクで、なにか理由があるときにサンゴ砂やカキガラを出汁パックに入れて投入するイメージで入れています。
微々たる影響ですが、ベタがぐいぐい泳いだときに、サンゴ砂のやすりのような表面に当たるとヒレに悪影響なのではというのも避けている理由のひとつです。
水道水のpHを維持するイメージがおすすめ
ここまで言ってなんですが、わたしの場合最初から酸性、アルカリ性に調整することは少ないです。
その個体が明らかに酸性を好む、アルカリ性を好むというのはわからないので、まずは中性で調整しています。
日本の水道水はありがたいことに中性に調整してあることが多いので、水道水のまんまでOKですね。
水道水の水質を維持するのは簡単で、ただ水替えすればOKです。
もし頻繁に手入れできず、中性を維持したいという場合には、大磯砂などややアルカリ性に傾けてくれる砂利を入れておけば、大きく酸性、ないしアルカリ性に傾くことが少ないのでおすすめです。
まとめ:極端はNG!状態を見ながら調整しよう
どの魚にも言えることですが、初心者がやりがちなのが「こう言われたからそうしなきゃ!」と急いで手を入れてしまうこと。
でも、その管理で状態がいいなら、その状態を維持するという判断も重要です。
とくにベタのような丈夫な魚では、水質が合わないからと言って突然調子を崩すこともすくないので、調子に違和感を感じてから対処しても十分間に合います。
アルカリ性に突然調整するのではなく、いま状態がいいなら、異変がった時の一つの可能性としてアルカリ性に傾けてみるという程度でいいのではと思います。