ディスカスを飼育する目的と聞けば、繁殖風景を目の当たりに見たいという意見がとても多く聞かれます。
それほどまでにディスカスの繁殖風景は観るものの目を引きつけます。
では、どのようにすればディスカスの繁殖を見られるのでしょうか。
ディスカスの繁殖は簡単?
生き物の繁殖と聞くととても難しいことのように感じるかも知れません。
ですが、ディスカスの繁殖はポイントさえ押さえていれば特に難しいものではないのです。
唯一の問題があるとすれば、ちゃんとペアリングしてくれるかということだけです。
一度は経験して欲しい、ディスカスの繁殖について、ポイントを絞って解説します。
ポイント1.親魚の選び方
親魚を選ぶ場合のポイントは、数と成熟度にあります。
ディスカスは産卵・放精時以外で雌雄を見分ける事は出来ないので、雌と雄を同じ水槽に入れる為にはある程度の数を入れておくことが必要です。
一つの水槽に5匹以上のディスカスを入れる事で、全てが雄またはメスという状態をかなりの確率で避ける事ができます。
魚の年齢は人の目で見て分かるものではありません。
繁殖が可能となる大きさの目安としては、大凡 8センチの円ほどになってからと見ておくと良いでしょう。
筆者の場合、自宅で生まれた稚魚の誕生日を記録していますが、この大きさになるまでは大凡1年半ほどかかっています。
ポイントその2.ペアリング前の同調行動
ディスカスはペアリングする前に同調行動を起こすようになります。
特徴としては、2匹で並んで泳ぎだしたり、互いに見つめ合っておじぎをするよ
うな行動をするようになります。
また、交互に鰭を目いっぱい広げて痙攣のように鰭を震わせるようなこともあります。
この状態が続くと2匹だけのテリトリーを持つようになり、そこに近づく他のディスカスを攻撃するようになります。
こうなれば、ペアリングしたと見て良いでしょう。
ペアリングを確認したら
ペアリングを確認したら、出来るだけ早く別の水槽へと移すことが必要ですが、筆者はペア以外のディスカスを別の水槽へと移すようにしています。
こうすることで、慣れた環境にペアを残してあげることが出来れば、その後のうまくことが進みます。
専用水槽の準備
ペアリングしたままの水槽を使うことが出来れば一番良いのですが、そうできない場合でもペア専用の水槽を準備しなければなりません。
その場合でも、飼育水の半分はペアの水槽へと移し、同じ環境になるようにして上げましょう。
筆者は全ての水槽(ディスカスのもの)は、同じ頻度で同じ水質調整を行い、緊急の移動をしなければならなくなった場合でも飼育水によるストレスを感じないように複数の水槽を準備することにしています。
産卵筒と水質の調整
ディスカスの繁殖というと、産卵筒が必要ですがこれは市販されている産卵筒である必要はありません。
ディスカスの産卵筒として市販されているものは、大型過ぎて扱いづらいからです。
垂直に近い状態のものであれば代用は可能で、プレコの産卵筒を立てて使用するなどすれば簡単です。
水質調整はあまり気にしない方が良いでしょう。
不必要に様々な調整剤を投入すると、ディスカスも薬に酔ってしまうことがあります。
水質調整剤はカルキ抜きがあれば十分、コロイド保護材まで使っていれば他のものは必要ないでしょう。
産卵を確認したら
ディスカスの産卵は、夕方~夜にかけて行われることがほとんどです。
雌が卵を産み付け、雄が卵に放精する行動を何度か繰り返して行います。
これから、3日程は親魚が交代で鰭や口を使って新鮮な水を卵に送り続ける光景が見られるでしょう。
ここで注意しなければいけないことは、決して真っ暗にしないことです。
昼夜通して明るくするのではなく、夜は月明かり程度の光が水槽に入るようにして親魚を安心させます。
筆者は読書灯などを天井へ向けて、この状態を作っています。
やはり、真っ暗になると卵を守っている親魚にストレスを感じさせる訳にはいきません。
孵化した稚魚の管理
産卵から3日程すると無数の稚魚が生まれ、筒に群がります。
このときはまだエサを必要としていないので特に何もすることはありません。
孵化できなかった卵が白くなってきていますが、これは親魚が食べて綺麗にしてくれるので決して人の手で水掃除はせず、まだしばらくは親魚に全てを任せます。
数日すると、稚魚が親魚の体にまとわりつく光景が見られるようになります。
ここからしばらくの間が、ディスカス繁殖の最大の見せ場です。
親魚は体表からディスカスミルクと呼ばれる分泌物を出して、稚魚にこれを齧らせます。
親魚の体色が落ちているのもこの為ですが、水質悪化を避ける為にも親魚への給餌は避けましょう。
産卵後の親魚の管理
エサを食べない上に稚魚に体表を齧られるのですから、親魚も弱りが見えてきます。
しかしここで私たちの勝手な判断で、親魚と稚魚を引き離すと稚魚は成長出来ません。
親魚の行動をよく見ていると、稚魚に齧られる痛みに耐えていることが見て取れます。
稚魚を離すタイミングは、親魚を見て判断します。
体表を齧りに来た稚魚を嫌がって逃げたり、振り払おうとした行動が見られたら親子の別れのときです。
この場合も水槽に稚魚を残して、親魚を別の水槽へと移すようにして稚魚を水質変化のストレスから守ってあげることが必要です。
稚魚の発育過程をチェック
稚魚たちは怖いもの知らずで水槽を泳ぎまくるので、時には給水器機に吸い込まれるという事故も起きてしまいます。
こういった事故を防ぐ方法として、給水部分のストレーナカバーに茶こしなどを巻いて吸い込み事故を防止する方法もお薦めです。
体調8ミリほどになると小さいながらもディスカスと分かるようになりますが、こげ茶色が目立ちます。
親魚のように美しい色合を出せるのは半年ほど先のこと、将来どのようなカラーを見せてくれるのか楽しみに育ててあげましょう
水温と給餌、そして水替え
水温は基本28℃に設定しておきます。
26℃でも成長に支障はありませんが、2℃ほど高めにしておくことで成長が促され、より健康で大きな個体へと育ってくれます。
親魚と離した直後は、ブラインシュリンプを与えます。
孵化器を使って生のブラインシュリンプを与える方法が紹介されていますが、冷凍のものでも十分です。
かえって、塩抜きに失敗したものを与えとしまうリスクの方が怖いというのが筆者の正直な思いです。
水替えは週に一度、1/3換水するペースで良いでしょう。
正直なところ、稚魚から換水になれていると成長させていく過程でも換水を好むようになってきます。
特にディスカスハンバーグを幼少期から与えると、成長も速いのですが水質の悪化も進みやすくなります。
水替え好きな個体へと育ってくれていると、育てやすいという利点が出てきます。
親魚との隔離
親魚と別離した稚魚たちも成長していくに従って新しい生活を考えてあげなければなりません。
また、親魚も疲れた体を十分に休ませてあげることが必要です。
新しい生活へ
生まれた稚魚も全てが元気に育つとは限りませんが、それでも50匹以上が成魚へと成長することが多いです。
成長していく過程で、始めは広かった水槽もだんだんと手狭になってきて、最初は二つ目の水槽を準備しても、半年もすれば三つ目の水槽を考えなければならなくなります。
無論、全てを育ててあげることが出来れば良いのですが、育てた稚魚を手放すことを考えなければならないこともあるでしょう。
筆者は懇意にしているアクアショップがあるのでそちらにお願いしたり、WEBのペット里親サイトを利用したりしています。
こういった繋がりで出来た、アクア仲間との情報交換もなかなか楽しいものです。
親魚の休息期間
親魚は稚魚から離して、しばらくの休息期間が必要です。
このときは、コロイド系の水質調整剤を規定量の1.5倍~2倍ほど使用して稚魚に齧られて傷ついた体表の再生を促してあげましょう。
エサは、メインのディスカスハンバーグと高カロリーの乾燥餌、冷凍赤ムシなどを交互に与えて体力を回復させます。
ペアのまま一緒にしておくと体力の回復を待って次の繁殖行動に入る為、水槽の都合などですぐに次の繁殖を行いたくない場合には、別々の水槽で飼育します。
他のディスカスのいる水槽へ戻しても良いのですが、ペアを同時に戻すとテリトリーを作って、他のディスカスを攻撃してしまうので3日ほど間を空けて戻すと良いでしょう。
3日ほど別の水槽にいることで、関係が一旦リセットされます。
再びペアリングするかは、運によるところというのが筆者の感想です。
稚魚育成の注意点
稚魚も早い時期から、ディスカスハンバーグを与えておくことが大切です。
なぜなら、1センチ程度に成長するまでに与えていなかったエサに対して反応しなくなるのです。
人間も小さいうちから好き嫌いなく育った方が良いのとまったく同じことではないでしょうか。
ブラインシュリンプと一緒にメダカのエサなども与えておくと、乾燥餌にもすぐに順応してくれるようになります。
おわりに
何度やっても、新しい発見と感動を与えてくれる ディスカスの繁殖。
これを機会に多くの方にチャレンジして頂ければと思います。