ディスカスは優雅に泳ぐ姿や、生き物とは思えないほど美しい体色で見る者をひきつける熱帯魚です。
でも、初心者が手を出すには早すぎるんじゃないかと不安になることもしばしば。
いいえ、そんなことはありません。
飼育の基本をしっかりと押さえておけば、決して難しい魚ではないことを、ディスカスのブリードまで楽しむ筆者がお話しします。
熱帯魚の王様とも称される「ディスカス」の魅力とは?
ディスカスの魅力は何と言っても、その美しさにあります。
円盤とも言い現わされる側面は、全体を青や赤などそれぞれの個体独自の色合いで私たちを魅了してくれます。
淡水魚なのに海水魚以上に美しく艶やかなディスカス。
私も魅了された彼らの魅力をご紹介します。
個体それぞれの個性が光る
ディスカスは同じ種類に分類されているカラーリングでも、よく見ると各々に特徴があり、飼いつづけていると見分けることもできるようになります。
また個体別に性格の違いもあり、学校の生徒たちを見ている先生のような気持ちにもなるものです。
育てていく楽しみがあるのは、こういったところも大きく関わっているでしょう。
神秘的な繁殖風景
ディスカスは子育てをすることでも知られています。
生まれてきた稚魚たちが親魚の体の周りに寄り添って泳いでいる姿は、心温まる風景であると同時に神秘的でさえあります。
ディスカスの繁殖を一度目の当たりにすると、その素晴らしさは生涯忘れられない光景となることでしょう。
ディスカスの種類
ディスカスは数多くの愛好家によって飼育され続けてきましたので、交配されることも多く、その種類は多岐に渡っています。
その中でも基本原種と呼ばれているものが、4種類あります。
「ヘッケルブルー」「グリーン」「ブラウン」「ブルー」と呼ばれている4種が原種とされています。
見た目的な違いだけでなく、飼育する上でその出生も重要なファクターになります。
ワイルド個体
ワイルド個体とは、自然環境の中で育ったものを採取した個体です。
日本語に訳すと、野生種と言うところでしょう。
いつも安定した入荷が約束されている訳ではありませんので、やや高価になることが多いことが難点です。
ブリーディング個体
ブリーディング個体とは、人の手による繁殖で生まれた個体です。
安定した環境の中で育てられていますので、先のワイルド個体と比べると比較的安価で流通しています。
またカラーリングも豊富で、「スーパーブルーダイヤ」「レッドメロン」「ピジョンブラッド」など、数限りない種類が確認されています。
自家繁殖したときに、どのようなカラーリングになるのかを見届けることも醍醐味の一つと言えるでしょう。
ディスカスに必要な飼育設備
では、ディスカスを飼育するにあたってどのような設備を整えると良いのでしょうか。
これはあくまで基本の飼育方法で、ショップでの飼育環境などに合わせて調整することも必要になります。
可能な限りディスカスを購入する予定の育成環境を把握して、飼育環境にも反映させましょう。
水槽は45センチ~60センチタイプがベスト
観賞魚を飼育するとき、水槽が大きければ大きいほど良いのですが水槽が大きくなるとそれだけ重くなってしまいます。
一般的な家庭の床過重から考えると、安心して設置できるのは60センチタイプまでといえます。
90センチ以上の水槽を設置するのであれば、床の補強を行っておく方が良いでしょう。
ショップでみれば、60センチタイプでもさほど大きくは感じませんが、家に持って帰るとかなり大きく感じるものです。
これまでに水槽を置いたことがないというのであれば、45センチタイプから始めてもまったく問題はありません。
水量は少なくなりますがディスカス飼育の重点事項である、水替えが楽になるからです。
また、45センチ・60センチタイプは各メーカーの規格がほぼ同じですので、フタ選びやライト、ろ過装置もそれに合わせて作られており、汎用性に優れていることもポイントです。
水槽の大きさは、飼育するディスカスの大きさや数にも依存します。このあたりは購入前に、販売店に確認しておくと安心です。
フィルターは上部濾過がおすすめ
ディスカス飼育の場合、濾過装置は上部濾過をお薦めします。
ディスカス飼育では高カロリーのエサを多用することに加え、ディスカスの口が小さく食べ残しが濾過機へと堆積してしまうので、フィルターの状態を一目で把握できて必要に応じてすぐに洗浄・交換を行える上部フィルターが最も使いやすいといえます。
オールガラス水槽や、規格外サイズの水槽など、一部上部フィルターが使えない場合があるので注意!
ヒーターはサーモスタット別のものを選択
サーモスタット内蔵で、コンセントに繋げば自動で温度を調整してくれるオートヒーターは、平均して26℃あたりに温度設定をしてくれるので、普通の熱帯魚や金魚を飼育する場合は便利です。
しかし、ディスカスの場合は自由に温度設定を変えられるサーモスタットが別なものがお薦めです。
なぜなら、体調を崩したときに一時的に温度を32℃あたりまで上げて回復を促すことがあるからです。
26℃設定でも飼育できないことはありませんが、新たにヒーターを買い足すことを考えると、多少割高にはなりますが最初からサーモスタット別のヒーターを使っておくと安心できます。
砂利は不必要?ベアタンク飼育推奨!
通常、熱帯魚の飼育では、濾過バクテリアの繁殖や水質安定の為に砂利を敷くのが基本ですが、ディスカスの水槽ではあまりおすすめしません。
ディスカスはエサを食べるのがとても遅く、底に落ちたエサを食べることが多いので、砂利などがあるとエサを食べにくくなり、拒食になってしまうこともあります。
また水替えの頻度も高くなるので底砂は敷かずに、砂利を敷かない「ベアタンク方式」での飼育が良いでしょう。
ディスカスに理想的な飼育環境と管理
ディスカスはきちんと飼えば、とても丈夫な魚です。
観賞魚には珍しく、水替えが好きという特性も持っています。
それらを踏まえたうえで、ディスカスが心地よく過ごせる飼育環境と、日ごろの飼育管理について解説します。
水温はヒーターで25℃~28℃に
ヒーターの項目でも触れましたが、普段の飼育温度は26℃を目安にしておけば特段の問題はありません。
しかし、温度をやや高めに設定しておくと成長が早まり、病気予防になるというメリットもあります。
少し高めの温度設定ですくすくと成長させてあげると、愛情も倍増しますね。
水質は流木などで弱酸性に
ディスカスの好む水質は弱酸性です。
ただし、日本の水道水は、地域差はあれど中性に調整されていることが多いため、特になにもしなくとも、塩素除去さえ行っておけばディスカスの育成には問題ないでしょう。
あえてpHを落として弱酸性にしたい場合は、流木の投入もおすすめです。
水槽のレイアウトも兼ねて流木などを入れることも良いのですが、流木の形によってはディスカスが怪我をしてしまうこともあります。
流木を入れるなら、角のないものを選んで使うと良いですね。
また、ディスカスは綺麗な水を特に好みます。
水替えを定期的にしてあげることで、成長が加速しています。
水質を安定させるには水草がポイント!
水質を安定させる為のグッズや液体などが沢山売られていますが、こういったものを使うよりも、水草をいれることで水草が養分を吸い取って成長するため、安定した水質を維持できるようになります。
鉢植(ポット入り)などでは根を張れず枯れてしまうことが多いので、水草を流木に活着させたり、水草リングで根本をまとめたりして水槽にいれておくと水草が長持ちし、より水質が安定しやすくなります。
流木に活着させるならアヌビアスナナ、水草リングで根本をまとめるならバリスネリアあたりが丈夫ですし、ディスカスの遊泳の邪魔になりにくいのでおすすめです。
ディスカスの選び方
では、飼育環境や設備のイメージが整ったところで、ディスカスをお迎えする準備をしましょう。
もちろん状態の悪いディスカスでは管理するのが大変ですし、もしかすると先天性の病気で寿命が短い可能性もあります。
せっかくなら状態のいいディスカスを迎えたいという方は、以下のようなポイントに注意してみましょう。
専門店では鰭と色をチェック!
ディスカスに限ったことではありませんが、観賞魚の体調は鰭と体色に現れます。
ヒレを畳んでいるとか、体色が優れないものは泳ぐのも遅く見ていても元気がありません。
しかし初心者だと見分けるのが難しいですし、専門店であれば、スタッフの人にどの個体が良いか尋ねるのもひとつの方法です。
信頼できるショップでは、調子の悪い個体を売ろうとはしませんので安心して任せても良いでしょう。
専門店以外での購入は病気に注意
アクアショップという店名であれば、ひとまず安心ですが通常のペットショップの場合、どの程度までディスカスに詳しいのかはわかりません。
水槽を見て、お目当てのディスカスがいればしっかりとヒレと体表をみてください。
ヒレに白い点があるとか、体表で鱗が剥がれているようなことがあれば病気になっていると考えて良いでしょう。
また、大人のディスカスの飼育にはディスカスハンバーグも欠かせませんので、これを売っているかどうかもお店を見極めるひとつのポイントになります。
ディスカス飼育に欠かせないディスカスハンバーグを置いていないなら、私ならどうやって成長させているのか、不安でたまりません。
おわりに
経験をもとにディスカスの魅力や飼育方法について紹介しましたが、ディスカスという魚について少しは興味を持っていただければ幸いです。
ディスカスは平均して、8年くらい生きる魚です。
繁殖を繰り返していくなら、何世代にもわたってともに生涯を送っていける素晴らしい存在です。
息を飲むような美しさをもつ、ディスカス。
熱帯魚の王様をこの機会にもっと多くの方に知っていただけることを祈っています。