ベタの繁殖は産卵までが一番大変です。
その後のトラブルは少ないですが、せっかく産卵にこぎつけたのに、気づいたときに卵が減って、オスのおなかがポッコリしていることがあります。
これが食卵と呼ばれる行為で、せっかくの卵をオスが食べてしまう失敗です。
せっかくの卵をしっかり稚魚にしてあげるために、食卵の原因とそれぞれの対処法を解説します。
①卵が無精卵の場合

せっかく産んだ卵も、無精卵だと孵化しません。
無精卵の卵はカビが生えて傷んでしまい、有精卵も痛めてしまいます。
ベタには卵が無精卵か有精卵か見極める能力があるようで、無精卵の卵は早くに食べて除去します。
無精卵に関しては交尾段階での失敗なので、ペアリング時に対策しましょう。
輪郭が透明に見えるのが有精卵
無精卵と有精卵の違いは、顕微鏡で見てもよくわからないというのが正直なところです。
濁っていたり、黄色かったりすると無精卵と言われることもありますが、これは親のカラーや抱卵から排卵までのタイミングによっても変わります。
一度ピルクルのように濁った薄茶色の卵を産んだメスがいましたが、問題なく孵化しました。
傾向としては、有精卵の場合、卵の輪郭が透明に見えることが多いように思います。
これも顕微鏡で見なければわからないレベルですし、問題がある卵はオスが除去してくれるので、人間側でなにか対処する必要はないでしょう。
初産や高齢のメスに多い
ベタの繁殖における無精卵は、オスよりもメスに原因がある場合が多いです。
経験上、とくに無精卵を生みやすいのが、初産のメスや高齢のメスです。
いずれも受精のタイミングを外してしまい、せっかく生んだ卵が無精卵だったり、受精しても育たないこともありますね。
高齢のメスに関しては、繁殖の負担で死んでしまうこともありますし、繁殖は避けたほうがいいでしょう。
初産なら時間をおいてトライしてみよう
初めての産卵で失敗してしまうのは、ベタの繁殖では珍しいことではありません。
卵がうまく産めなかったり、おなかに卵が残っているのに交尾を終わらせてしまうことも少なくありません。
初めての産卵で失敗してしまっても、2度目の繁殖でうまくいくことも少なくありません。
相性のいいペアであれば、3回目ぐらいまではトライしてみるといいでしょう。
②オスに食欲が残っていた

オスが卵を餌として認識してしまうと、せっかくの有精卵でも食べてしまうことがあります。
これがいちばん痛ましいミスですね。
何度トライしても食べてしまうオスもいますが、基本的には餌抜きのタイミングを重視することで食卵を防ぐことができます。
餌抜きのタイミングが重要
ベタの繁殖前には、オスメスともに餌を与えないのがセオリーです。
これは食卵を防ぐ意味合いもありますが、あまりに活動的だとオスがメスを殺してしまったり、必要以上にメスが逃げてしまい、不要にケガを負うのを避けてあげるためでもあります。
この餌抜きのタイミングを誤ると、オスに食欲が残ってしまい、卵を食べてしまうことが起こりえます。
基本的にはメスとオスをお見合いさせるタイミングで餌を抜くようにしましょう。
③環境が合わず卵が死んでしまった

有精卵も産卵後に死んでしまうことがあります。
死んだ卵もほかの卵に有害なので、オスが食べて除去します。
これはベタの問題よりは飼い主の環境作りに問題があるので、よく注意してあげましょう。
水温に注意
まず注意するべきは水温です。
水温は低くても高くても死卵の原因になるので、しっかり水温管理してあげましょう。
ペアリング自体は27~28℃ぐらいのやや高めの水温が適していますが、ヒーター付近で産卵した場合、水温の状況でゆで卵になってしまいます。
低いと卵がせずに死んでしまうので、基本的に孵化するまでは26℃ほどを維持してあげましょう。
孵化して色づいて来たら、28℃程度に上げることで成長を速めてあげることができます。
雑菌が増えると死卵の原因に
卵はデリケートで、オスの管理がないとすぐに病気になってしまいます。
とくに注意するべきなのがカビで、カビの発生しやすい環境は避けるようにしましょう。
水の中に不要に養分が多い環境がとくにカビを誘発しやすいので、ペアリング前には水替えや餌の食べ残しやフンを除去しましょう。
また、水中に菌が多い状態だと、水面に膜が発生することがあります。
これは卵にへばりつくと酸欠などの原因にもなるため、なるべく水に不要な不純物がない状態にしておくと安心です。
④他の魚に警戒した

ベタは闘争心が強く、警戒心も強い魚です。
ほかの魚の存在を意識してしまうと、卵を取られるぐらいなら食べてしまおうという本能が働き、自分で食べてしまうことがあります。
これもベタというよりは飼い主側の問題なので、繁殖させる前に周辺の環境にも気を配ってあげましょう。
隣の水槽には目隠ししよう
水槽がたくさんある家庭だと隣の水槽と密着して繁殖用水槽を置くこともありますが、これは卵を守るベタにとって大きなストレスになります。
ベタ同士だけでなく、ほかの魚にも警戒するため、隣に水槽がある場合は目隠ししてあげたほうがいいでしょう。
我が家ではプラダンを使って目隠しを作っています。
メスも早めに離すべき
産卵直後まではオスメス仲良く卵を見守りますが、あるタイミングから突然オスがメスを卵に近づかせないようにします。
メスも卵に危害を加えるわけではないのですが、メスにもよくないですし、オスもストレスになるので離してあげたほうがいいでしょう。
産卵が完全に終わったのが確認できたら、泡巣や卵から離れたタイミングを見計らって、メスを別な水槽に隔離するといいでしょう。
産卵後のメスはかなり体力を消費しているので、手厚く介護してあげてくださいね。
というわけで、今回はベタの食卵に関しての紹介でした。
我が家の飼育環境でも、10回に1回は食卵で卵が激減したり、全滅することはあります。
ベタが原因の場合は根気よく試したり、ペアを変えたりして対処しなければいけませんが、飼い主側のミスで食卵させてしまうのはとてももったいないです。
まずはベタのストレスにならない環境を作り、卵が死なない環境を作るのは必須です。
経験してみなければわからないこともありますが、すくなくともこの2点はこころがけて繁殖に挑んであげましょう。
今後も優しい熱帯魚さんサテライトではベタの繁殖について解説していきますので、ぜひまた遊びに来てくださいね!