初心者の方でも、「水槽を立ち上げる時にはフィルター、ヒーター、砂利は用意しなければ」と、しっかり認識してくれているのは、店頭に立っているとよくわかります。
しかし砂利については、「見た目のために入れるもの」という認識で、好みで選んでしまっている方も多いように思いました。
じつは砂利(底材)には、見た目を鮮やかにする以外にもさまざまな効果があります。
そこで今回は、初心者も中級者も確認してほしい、アクアリウムの基礎になる砂利の選び方を解説していこうと思います!
水槽の砂利は何のために?
水槽の砂利は、入れることで見た目が自然になり、魚たちも映えますよね。
しかし砂利にはそれだけでなく、さまざまな効果があり、飼育の手助けもしてくれます。
まずは砂利を入れるメリットを理解しておきましょう!
水の浄化能力が上がる
フンやエサの食べ残しからは、アンモニアが発生し、これは魚たちにとって非常に有害です。
そのアンモニアを、バクテリアたちが段階的に無害なものへと変化させてくれます。
そのバクテリアたちは、ろ過フィルターや水の中にも住んでいますが、もっとも住みやすいのが砂利の中だといわれています。
これが水槽に砂利を入れるなによりの効果ですね。
魚の発色がよくなる
砂利を入れると魚がキレイに見えますが、これは視覚効果だけではありません。
カメレオンが回りの色に合わせて擬態するのは有名ですよね。
じつは魚たちにも近い能力があり、砂利の色によって微妙に体色の濃さが変化します。
砂利にはさまざまな色がありますが、飼っている魚に適したものを選ぶことで、より魚本来のキレイな色を発色してくれるようになります。
水質を調整する
じつは、砂利の成分は少しずつ水に溶けて、水質を変化させる効果があります。
砂利の種類によって、水をアルカリ性に傾けたり、酸性に傾けたりするものがあります。
ミネラルや養分を供給する、逆に吸収して汚れを抑えるものもありますね。
適した水質は魚によって違うので、魚に合わせて適切な底材選びを心がけましょう。
砂利のおおまかな種類
底材にはさまざまな種類があり、その効果や使い方も違います。
すべてを網羅すると短編小説並みに長くなってしまうので、今回はおおまかに5つに分類して解説します。
天然砂利
価格(1㎏)…約300円~ |
交換目安……なし |
使いやすさ…☆☆☆☆ |
川や海など、自然にある砂利や砂を洗浄し、販売している底材。
安くて扱いやすい「大磯砂」が有名ですね。
天然素材だけあって見た目も自然ですし、採取地によって色も大きさもさまざまですね。
国産のものが多く、たいていは中性~弱アルカリ性に調整する効果があります。
砂状のタイプもありますが、ろ過フィルターを痛める場合もあるので要注意!
ガラス砂利
価格(1㎏)…約1,000円 |
交換目安……半年~ |
使いやすさ…☆☆ |
人工的に作ったガラスの粒が原料の底材。
色とりどりで、ボトルアクアリウムでよく使われますね。
洗う時に欠けてしまうことがあり、表面が滑らかでバクテリアは住み着きにくいデメリットもあります。
水質を調整する効果もあまり期待できません。
小さなパックで安く売っていますが、水槽に入れる量を買うと意外に高くなってびっくりするかも?
ろ過砂利
価格(1㎏)…約500円~ |
交換目安……半年~1年(ろ過効果がある期間) |
使いやすさ…☆☆☆ |
ろ過効果の高い素材を砕いた底材。
セラミックやゼオライト、麦飯石を使ったものなどがあります。
有害物質の吸着効果があり、通水性もいいのでバクテリアも住みやすい砂利。
ただし吸着効果には限界があり、天然素材に比べて寿命が短めなデメリットもあります。
養分も吸い取ってしまうので、水草との相性が悪いから注意してね!
ソイル
価格(1㎏)…約300円~ |
交換目安……1年~ |
使いやすさ…☆☆☆ |
土を焼き固めて粒上にした底材です。
水質を調整する効果が高く、水草用に養分を多く含んだものもあります。
長く使うと徐々に溶けてしまい、かつ洗って使いまわしできないのでコストは高くなります。
水草水槽や、レッドビーシュリンプにはこれがベスト!
サンゴ砂
価格(1㎏)…約300円~ |
交換目安……3年~(pHを上げる効果がある期間) |
使いやすさ…☆☆☆ |
白化したサンゴが砕けたもの。
飼育水をアルカリ性に傾ける効果があり、海水魚によく使われます。
粒一つ一つに小さな穴があり、バクテリアが住みやすい特徴があります。
ただし、一度コケが生えると取れなくなり、見た目が悪くなりやすいデメリットがあります。
グッピーなど、淡水魚にも弱アルカリ性の水を好む魚がいるよ!
※価格は容量によって増減します。
※交換目安は、飼育状況によって大きく変わります。
魚の種類別に砂利を選んでみよう
では、基本的な特徴が分かったところで、飼育したい生き物の種類別に底材を選んでみましょう。
今回は特に初心者に好まれる7種類の生き物をピックアップしてみました。
ネオンテトラ
ネオンテトラをキレイに飼育してみたい!
天然砂利、もしくはソイルがおすすめ!
ネオンテトラは弱酸性の水を好みますが、中性でも十分飼育できます。
底材が明るいと色が飛んで薄くなってしまうので、黒や濃い茶色がおすすめですね。
ソイルはまさに黒や茶色が多く、水を酸性に傾けてくれる効果もあるのでぴったりですね。
ネオンテトラを単体で飼育すると水槽内がやや寂しくなるので、水草を植えたいときにもソイルがベスト。
扱いやすさを考えるなら天然砂利、よりしっかりアクアリウム水槽を作りたいならソイルがおすすめです。
金魚
金魚が映える砂利はどれ?
大き目の砂利、もしくはろ過砂利がおすすめ!
金魚は水質への耐性がとても強いので、水質の面はそこまで考えなくでも大丈夫でしょう。
見た目的に考えると、白や赤、緑がかった砂利が混ざった、粒が大きめの五色砂利がおすすめ!
たくさん食べて水を汚すので、見た目は少し地味になるますが、ろ過砂利の機能性も有効ですね。
ソイルは金魚がかじってボロボロにしてしまうので、おすすめしません。
ベタ(ショーベタ)
ベタを飼うボトルアクアリウムにおすすめの砂利は?
ガラス砂利や、カラーゼオライトもおすすめです!
ベタには天然砂利やろ過砂利、ソイルなどもおすすめですが、最近は、ボトルアクアリウム用にガラス砂利も増えてきましたね。
どうしても殺風景になりがちなボトルアクアリウムも、ガラス砂利を入れれば存在感が増しますね。
水質調整能力が低いのも、水替えが簡単なボトルアクアリウムなら問題になりにくいです。
ろ過砂利の一種であるゼオライトに着色した、カラーゼオライトもぴったりですね。
バルーンモーリー
バルーンモーリーに合う水質に調整してくれる砂利はどれ?
大磯砂やろ過砂利、サンゴ砂もおすすめです!
バルーンモーリーは淡水の熱帯魚ですが、じつは弱アルカリ性を好む魚です。
バルーンモーリーに白点病などの病気が多いのは、無理に酸性の水で飼育しているのも要因の一つ。
砂利でしっかり適切なpHを維持してあげましょう。
天然砂利のなかでも、大磯砂は貝殻などが混ざっているのてアルカリ性に傾ける効果があるのでおすすめです。
ろ過砂利はpHを調整する効果は弱いですが、水質が悪化して酸性に傾いてくれるのを防ぐのでぴったりですね。
アルカリ性に傾けることを重視すれば、もちろんサンゴ砂もおすすめです。
コリドラス
コリドラスが生き生きする砂利は?
細目の砂がおすすめ!
コリドラスは弱酸性~中性の水を好むので、アルカリ性にかたむけるものは避けるべきです。
それ以外の選び方としては、ヒゲのついた口で底を探る習性があるので、大粒よりもサラサラした砂のほうが生き生きと泳ぐ姿が楽しめます。
ガラス系など、人工的な素材は鋭いので、天然砂がおすすめですね。
ミドリフグ
ミドリフグは汽水に住む魚だけど、どんな砂利がおすすめ?
基本はサンゴ砂、だけど天然砂利が合うこともあるよ!
ミドリフグは河口付近の汽水域(薄まった海水)で暮らし、大人になると海にまで生活圏を広げる生き物です。
このため基本は弱アルカリ性の水を好むので、サンゴ砂が基本になります。
ただし汽水域は海水に比べるとpHは高くないため、大磯砂でも十分飼育できます。
わたしも、サンゴ砂だとどうしても汚れが目立ったので、大磯砂をベースに、カキ殻をろ過フィルターに入れて飼育していたこともありました。
余談ですが、ミドリフグとして流通する魚には4種類いて、それぞれ適したpHが微妙に違うともいわれています。
アルカリ性で維持してみて、発色が悪いようなら徐々に中性に傾けてみてもいいかもしれません。
ウーパールーパー
ウーパールーパーに適した砂利は?
誤飲に注意して、中性を維持できる砂利を選びましょう!
ウーパールーパーは、本来中性あたりの安定した水質を好みますが、水温とろ過に注意すればpHに対しては意外と寛容な生き物です。
それより重要なのが誤飲で、エサを吸い込んで食べるため、いっしょに砂利まで飲み込んでしまい、腸閉塞を起こすことがあります。
このため、ウーパールーパーの砂利は、なるべく大きめの物で、玉砂利などが好まれます。
砂利を入れない「ベアタンク」と呼ばれるスタイルの飼育方法も一般的ですね。
まとめ
砂利には水槽の景観をよくするだけでなく、
- 水質浄化
- 魚の色揚げ
- 水質の調整
などの効果があります。
砂利にも素材の違いから特性が違うので、基本は魚の生態を知り、それに合った砂利から好みのものを選びましょう。
砂利は水槽の中でも水質への影響が大きく、まさにアクアリウムの基礎になるアイテムです。
景観ももちろん大事ですが、中に住んでいる魚ファーストで考えて、適切なものを選んでくださいね。