「熱帯魚屋・アクアショップを開業するにはどうしたら?」熱帯魚屋を始める方法

「熱帯魚屋・アクアショップを開業するにはどうしたら?」熱帯魚屋を始める方法

元熱帯魚屋が、皆さんの質問にお答えするコーナーです。

今回は30代男性の方から、熱帯魚屋を起業するにはどうしたらいいの?というご質問をいただきました!

私の夢ですが、将来アクアリウムショップを開業したいと思っています。

最近は町の熱帯魚屋さんのようなお店も少なく、定年後にでも細々とそういったお店をやれたらいいなと思っています。

実現するしない、儲かる儲からないはともかく、アクアリウムショップを開業するハードルはどれほどのものなのでしょうか?

元熱帯魚屋とのことですので、ぜひ経験を交えてお答えいただければと思います。

儲かる儲からないは別として、開業するハードルは思っているより低いですよ!

アクアリウムを趣味にしていると、けっこう多くの方が自分のお店を持ちたいと思っているようです。

お店に居ても、お客さんからやってみたいと思っていると相談を持ちかけられ、実際に開業してしまった人まで居ました。

儲かる儲からないの話はそれはそれで面白そうなのでぜひ別の機会にお話できればと思っていますが、今回はまず、熱帯魚屋・アクアリウムショップを開業するにあたってどのようなハードルがあるのかを解説して行こうと思います。

熱帯魚屋を開業する3つのハードル

まずは、熱帯魚屋を始めるときに壁になるであろう3つの問題から解説していきます。

もちろんこのほかにも小さな問題はありますが、とくに熱帯魚屋を始めるにあたって必ず突き当たるだろうポイントを解説して行きますね。

仕入れの問題

生体にも、普通の商品と同じく熱帯魚や金魚を海外から輸入、または国内から集めてキープしている問屋が存在します。

問題は、この生体問屋と契約するのが少し面倒ということです。

もともとどこかの店員で、独立するといった場合には比較的間口が広いのですが、いきなり電話して「魚を卸してくれ」と言っても、まずいい返事はもらえないでしょう。

どういう理由かはわかりかねますが、資本金などを聞かれるという話しもあるので、おそらく代金未払いを避けたい理由なのかなと思います。

あくまで私が現役だった時代の話なので、もしかしたら現在は間口が広がっているかもしれません。

この問題を解決するには、個人での輸入もひとつの方法です。

最近ベタやザリガニ界隈では当たり前になっていますが、個人で輸入し、それを販売すると言うスタイルも確立されつつあります。

こちらもそれなりのノウハウが必要なので、輸入を代行してくれる業者を探すといいかもしれません。

デメリットとしては、海外からの輸入なので入荷までのレスポンスが悪く、かつ死着の保証がないことです。

また送料と代行手数料を考えると大口の注文に限られるので、こまめな発注ができないのもデメリットになりますね。

商品がなければ商売しようがないので、第一関門とも言えるでしょう。

この問題は「ある程度専門性を持つ」という方法で簡単に回避できますが、長くなるのでまたの機会に。

資本金の問題

熱帯魚屋の開業資金は、普段足を運ぶお店を目指してしまうと、おそらく思っているよりはるかに高いです。

一時期のビーシュリンプブームのときはどかどか専門店がオープンしましたが、これはほかの魚にくらべて開業資金が少なくて済んだから。

とくにろ過の問題が大きく、メンテナンス効率と陳列を考えると水槽什器だけでかなりな額になります。

ひとつの例ですが、30坪のショップで什器から仕入れ、内装工事や水道工事等含めて総額1200万かかったと聞いたことがあります。

ビーシュリンプの場合は、大型のコンプレッサー1つで、水槽それぞれのスポンジフィルターでOKですし、1つの水槽でキープできる生体の総額が大きいのでこのデメリットはあまりなかったのかもしれませんね。

逆に、たとえば淡水メインでやる場合、ネオンテトラ1匹50円として、水槽1本に100匹入れても5000円です。

今回利率は明記しませんが、だいたいそれがロスなくすべて売れてもラーメン3杯食べられるかどうかの利益です。

そう考えると水槽の数が必要になりますし、その分ろ過装置を多くするか、集積ろ過の什器を買うかになってきますが、いずれにせよ初期投資はなかなか大きなものになるでしょう。

小さいお店で少ない水槽でも儲ける方法はもちろんあります。

もちろんここでダタで話すつもりはないので、いつかコンサル業を(略

テナント確保の問題

熱帯魚を扱う以上水槽を大量に設置する、つまり大量の水を屋内においておくということになります。

これは大家からすればかなり不安で、地震大国の日本においていつ地震で崩れるかもわかりません。

そうなると貸し渋りされ、理想のテナントを探すのは一苦労です。

さらに、床の耐加重もあるので、そもそも物理的に水槽を設置できないなんて場合もあります。

床が木材の場合はアウトですし、1階でコンクリートであっても基礎の打ち方や床張りでも変わってきます。

理想を言えば大きい熱帯魚屋か、生体の取り扱いのあるホームセンターの近くが狙い目ですが、そのエリアで理想のテナントを見つけるとなるとかなりハードルが高くなるでしょう。

まずはデメリットばかり並べて脅してみましたが、実際には日本各地に熱帯魚屋があることからもわかるとおり、実現不可能になるほどの問題ではありません。

やる気と工夫次第で、いかようにも回避できます。

いつかコンサル業をすることがあれば、ぜひご相談ください。(まずないと思います)

そのほかの問題は?

さて大きな問題はこの辺にして、その他熱帯魚屋を起業するにあたって注意したいポイントもご紹介したいと思います。

登記がどうのとか税理士さんに相談するかはほかの専門のサイトにお任せして、熱帯魚屋ならではの問題を解説します。

熱帯魚を売るための許可は?

生き物を売るんだから何か許可が必要なんだろう、と思う方が多いようですが、実は熱帯魚を売る分にはそのための許可というものが現状ありません。

許可が必要なのは犬猫など哺乳類や鳥類、爬虫類などで、熱帯魚は対象外になっています。

このため、商いをするための許可さえ取ってしまえば、仕入れて売ることができてしまうんです。

爬虫類というとカメレオンやトカゲなどを思い浮かべますが、もっと身近な生き物で亀がいますよね。

亀も爬虫類なのでもちろん許可が必要で、動物取扱業の許可を得なければいけませんし、販売時にも確認と署名が必要になります。

動物取扱業としてお店を開くに当たっては動物取扱責任者が必要になりますが、これには一定の要件があります。

一定以上の実務経験があるか、必要とする知識を学べる学校に通ったか、所定の資格を持っているかなど規定があります。

で、動物取扱者になると、ライバル店と一つ屋根の下、ギスギスした雰囲気の中、年に1回講習を受けなければいけません。

例:札幌市における動物取扱者の要件を満たす資格一覧

ちなみに両生類は魚と同じく販売許可が必要ありません。

おっと、ひとつ言い忘れそうでした。

魚の飼育に必須ともいえる魚病薬ですが、これは販売に許可が必要です。

動物用医薬品販売業許可証を取得し特例販売業となることで、店頭で魚病薬を取り扱えるようになります。

たしかこれ申請に3万円ぐらい取られます。お高い。

酸素ボンベを用意しよう

個人で飼育しているとあまり必要になりませんが、魚を買うときはたいてい袋に酸素を注入してくれますよね。

この酸素も、専門業者から購入する必要があります。

ボンベは交換式、つまりレンタルが一般的で、専門業者にボンベごと交換して新しいのを置いていってもらいます。

価格はもう忘れてしまいましたが、使用回数と見合わせてもそこまで気にするほどの価格ではなかったはずです。

町に酸素屋さんが1つはあるはずなので、タウンページで調べてみましょう。

人付き合い・会話は上手ですか?

正直、これが一番の難関かなと思います。

熱帯魚屋はどうしてか客と店員が親密になりすぎます。

もちろん悪いことではないんですが、大して売れないのに応対が長くなると、その分ムダな人件費がかかり、人を雇ったり寝ずにメンテナンスする必要が出てくるわけです。

私の知り合いにはこれでノイローゼになって辞めた人が居るほどです。

かといって、雑な接客では客は付かないので、「いいところで切り上げられる話術と人柄」が必須です。

適度に話を盛り上げられ、いいところで区切りを付け、雰囲気を壊さず再来店してくれるようなまるでナンバーワンホストやキャバ嬢かのようなハイレベルな世渡り術です。

私はたいしたルックスも知識もありませんでしたが、口八丁手八丁で世渡りしてきたのが功を奏し、かろうじてこのスキルだけはありました。

冗談のように語っていますが、これは熱帯魚屋の店員に必須のスキルだと思いますね。

まとめ:ぶっちゃけやめといたほうがいい

というわけで、今回は熱帯魚屋を考えている30代男性の夢を壊す、改め現実を見せる記事でした。

紹介したハードルはどれも乗り越えられるものですが、乗り越えた先に何があるかというと、浅い浅い水溜りです。

ドカンと儲けられるわけでもなく、景色がいいわけでもなく、時にはいやな思いをし、利益は染みてくるほどわずかです。

今回はどれだけ難しいのか教えてほしいと言う意図だと理解したので問題とそれなりの乗り越え方を解説しました。

が、「やるべき?やらないべき?」と聞かれれば、声を大にして

やらないべき

と答えます。

利益なんか少なくていいし、難しいことは乗り越えたらいいと思います。

しかし、人間だけは予想できません。

ほんとにとんでもなく湾曲した志向回路、行動原理の人間が山ほど居ます。

そしてなにがかなしいのかそういう人間は趣味に没頭しやすいので、趣味で金を稼ぐ施設である熱帯魚屋にたまります。

私も人に誇れるほどの給料はもらっていませんでしたし、ピュアブラックな悪徳企業でしたが、辞めた理由はそれではなく、たんに人間です。

そうとうな鋼鉄のメンタルをお持ちでなければ、なおさら定年後の楽しみと考えているなら、私はお店はおすすめしません。

魚を増やして卸す養魚場なんかのほうが精神衛生上いいですね。

語弊のない様に言えば、熱帯魚屋の店員は、おそらくアクアリストなら幸せな仕事です。

人間の対処だけ出来るなら、そんなに充実した仕事はないでしょう。

この点だけは最後に紹介して、今回はこれにて閉店とさせて頂きます。

なんだかダークな一面を見せてしまいましたが、個人的にはお店の裏側を話すのは面白かったですね。

次回は質問にはありませんでしたが、熱帯魚屋は儲かるの?儲からないの?というお話をしてみようと思います。

回答お待ちの方すみません。ちょっと息抜きさせてください。

というわけで今回はこの辺で。

次回更新までさようなら!

この記事の続編です!

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