プロが答えるQ&A「熱帯魚屋さんってどれだけ儲かるの?」

プロが答えるQ&A「熱帯魚屋さんってどれだけ儲かるの?」

毎度おなじみ、元熱帯魚屋さんが、皆さんからの質問にお答えするコーナーです。

今回は、前回お答えした「熱帯魚屋を始めるにはどうしたら?」という質問に続いて、ちょっと語りたかったことを書いていこうと思います。

質問をいただいたわけではないですが、形式上一応。

熱帯魚屋って、ぶっちゃけ儲かりまっか?

やり方によっては儲かりまっせ!

というわけで、熱帯魚屋やったらどんだけ儲かるのかを紹介して行こうと思います。

これから熱帯魚屋を始めたいと思っている方に参考になる情報を、なるべく同業者から苦い顔されないレベルで紹介していこうと思いますので、ぜひご覧ください。

熱帯魚の値段ってどう決めてるの?

気になるお魚たちの値段ですが、これはお店によりけりとしかいえません。

熱帯魚には定価が存在しない(ボトル入りの魚なんかにはあります)ので、お店が仕入れ値に利率を掛けて計算しています。

水道代、人件費、テナント代、電気代、消費税などなど加味して計算していますね。

あとはロスが発生しやすい種類や、大量購入されやすい種類なんかは掛け率が変わることもありますが、大きいお店だとおそらく一定の掛け率になっているのかなと思います。

ついでにいえば、関連用品を多く並べて、そっちで儲けられる大型店の場合、生体の利率は下げられるので、ちょっと安くなっていることもあります。

ホームセンターなんかもそうですね。

個人で始める熱帯魚屋では魚の売り上げは重要なので、安売りせずかつ高すぎない価格設定は必須です。

ぶっちゃけ利益ってどれぐらい?

さすがに実際の掛け率はここでは書けませんが、基本的には小売よりも飲食店に近いかなと思います。

私は飲食店の経験もありますが、私の勤めた店で比較すると熱帯魚より飲食の利率のほうがやや大きかったです。

一般的な小売は×1.3ぐらいかなと思いますが、生き物はそれよりぜんぜん大きいです。

水槽を管理する手間や水道光熱費はもちろん、死んでしまうことによるロスが発生するので、それを見越した価格設定になっているというわけですね。

つまり、粗利(売上-仕入価格)は大きいですが、純利を考えるとそこまで儲けていないのがわかると思います。

ロスを下げるために手を掛ければ人件費等がかかりますし、人件費をケチるとロスが増える悪循環です。

私が昔アルバイトで入っていたホームセンターでは、素人をそろえたばかりに莫大なロスが発生して、偉い人達はそのロスをなくす方法として冗談抜きで「入れるだけで魚が死ななくなる薬」を探していました。

もはや彼らの脳みそはファンタジーに行ってしまったようです。

水槽レンタルのほうがよっぽど儲かる

水槽 メンテナンス

最近、薬局やらなにやら水槽が置いてある場所も増えましたね。

たいてい水槽メンテナンス専門の会社が管理していますが、ショップでもやっているところがあります。

ストレートに言えば、下手に魚売るよりも水槽レンタルやメンテナンスのほうがよっぽど儲かります。

考えてみれば、一人の客がその店で1ヶ月に使うお金よりも、そこそこの水槽を設置して、月額でメンテナンスしたほうが安定してまとまったお金になるんです。

その結果水槽管理会社が乱立する現状になっているというわけですね。

知識と経験のある人がショップを開いて涙ぐましい努力をするよりも、何の知識もない人が管理会社を起こして儲かっているような場合すらあります。

趣味と実益の両立を狙うならショップですが、水槽をいじっていたいという方は、営業の辛さはありますが管理会社をはじめるほうがおすすめかもしれませんね。

雇われていたほうが幸せかも

今回はショップを開きたいという夢に付帯したお話ですが、根も葉もないことを言えば、雇われていたほうがよっぽど安定しています。

そもそもショップの雇われ店員は、たいした昇格もなく、場合によっては売り場を管理すると言う名目の請負契約だったりもする場合すらありますが、自分でやるリスクはそれの比ではありません。

初期投資は莫大でハイリスクローリターン、ノーリターンの場合すらあります。

それこそ定年後に、自分の好きな種類の魚だけ扱うようなショップならまだしも、熱帯魚屋としてやってしまうと地獄の雇われよりも地獄を見ることすらあります。

店員の給料はどれぐらい?

では勤めるとして、給料はどれぐらいなのでしょうか。

私の場合、一介の店員でしたので、給料はめちゃくちゃ低かったです。

一番高いときで月給154,000円、手取りで130,000円ぐらいでした。

ボーナスはなしで、業績連動として年に1回0~50,000円です。

熱帯魚業界としては福利厚生が手厚かったので何とかなりましたが、昇給も基本なしだったので一生の仕事にするのは難しいかなと思いますね。

知り合いのお店は基本給120,000円で、担当する売り場の売り上げでボーナス査定が大きい場合なんかもありました。

水槽メンテナンス会社は業務委託契約になっていて、担当する水槽の数×依頼料の計算だったので、それだけでは食べることはできなかったのですぐに退職しました。

専門店のほうがいいかも?

ショウベタプラカット フレアリング

私はオールマイティな熱帯魚屋出身ですが、おそらくコレと種類を決めてしまって、特化したショップにしてしまったほうが儲かるのではと常々思っています。

私の場合はベタで、ショップでも勝手に気になったベタを入荷して売っていたんですが、そのうちマニアのお客さんが付いて、いい品を仕入れて魅力的な価格さえつければ安定して売れていました。

もちろんマニアックすぎるお店は辛いものがありますが、間口が広く長く楽しめる奥深い生体なら、専門店にしたほうが勝負になるご時世かなと思います。

専門店になるとイベント出展も目指せます。

最近生き物系のイベントも増えていますし、生き物が好きな人が買う目的で集まるので、下手を打たなければそこそこの売り上げが一日で手に入ります。

比較的輸送しやすい爬虫類なんかは、全国のイベントを飛び回っているブリーダーさんやショップもありますよね。

お客さんも浅く広い知識よりも、深い知識を持っている店員に付くので、常連の確保も比較的簡単です。

私はもう客前に立つのがいやなのでやりませんが、ショップやらないと極刑になる法律ができたら、なにかしらの専門店をやると思います。

いろいろ扱うショップにしても、コレといった売りがあれば、商品数や安さ以外での大きな強みになりますね。

どれぐらい儲かった?

夢のない話ばかりをしてしまいましたが、最後に少しポジティブなお話もしましょう。

成功するとぶっちゃけどれぐらい儲かるのか、守秘義務に触れない範囲であくまで一例をご紹介します。

水槽大小あわせて120本、商品は約300skuで、1ヶ月平均120万円までは狙えます。

つまり一日平均4万円前後の売り上げです。

売り場面積は駅中のコンビニより一回り狭かったので30~40坪ぐらいでしょうか。

もちろん水槽維持費や人件費(とはいえワンオペでしたが)を考えればそこまで大儲けではありませんが、純利益を考えても黒字は維持できていますね。

ほかの店舗では犬猫なども合わせて月平均1000万以上もありましたが、大型店なので個人出店できる規模ではなく、こちらの店舗を例にしてみました。

実際には土日にドカンと売り上げを作って、平日は水槽の管理がメインになるような感じでした。

その店舗で何より強かったのが、家族連れがよく来る商業施設の中だったので、マニア以外からの売り上げがすごく多かったことです。

ちょっと寄ってみて興味を持ち、はじめてみると楽しくて、ドはまりしてマニアになるお客さんがとても多かったですね。

さすがにマニアになるといろいろなお店を選ぶようになりますが、中級者レベルになるまで囲い込めるのは、初心者をとりこめる環境も合わせると大きいメリットです。

専門店をやるにしても、初心者が増えなければ客数は減る一方なので、こういったお店は業界全体のことを考えれば増えてくれるに越したことはないと思います。

まとめ:飼育知識より人柄と経営手腕です

酸いも甘いも紹介しましたが、結局は経営者の手腕次第です。

生き物系の儲け方はほかの商売と少し違って、客の確保やターゲットにさまざまな方法でアプローチできます。

熱帯魚系で大企業というと本当に5本の指に納まる程度になるかと思いますが、それぞれ違うアプローチで成功しています。

個人で始める場合には、その土地柄や他店が肥やしてきた売れ筋がとても大切になります。

初心者にアプローチするのか、玄人を呼び込むのかなど、その地盤に合った経営が非常に重要です。

私の勤めていた会社だと、わりと現場に放任して、売れる部分を延ばす方法で売り上げを確保していましたが、その後体制が変わって一括してオペレーションを固めたことで、売り上げが大きく落ちた経緯もあります。

経営のセンスはどの業界でも人のやりかたがハマるかどうかなので、一概にどれがいいとは言いにくい部分もあります。

おすすめする商売ではありませんが、やり方次第では十分利益を取れるので、前回質問いただいた熱帯魚屋を始めたい方にも、ぜひ自分なりの戦い方を見つけてせめて大赤字を出さない程度に楽しみながらやってもらえればと思います。

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