塩水浴だけじゃない!ベタの病気治療や飼育に塩水を用いるメリットややり方を解説

塩水浴だけじゃない!ベタの病気治療や飼育に塩水を用いるメリットややり方を解説

ご存じの通り、ベタは本来、小川や沼のような淡水に済む魚です。

水道水の塩素を抜いただけの水で飼育しているという方も多いですよね。

しかし実はそんな淡水魚のベタにも、塩(塩水)はとても有効で、塩はベタ飼育では用意しておくべきアイテムの一つと言ってもいいほどです。

というわけで今回は、ベタと塩水の関係について、元熱帯魚店員でベタブリーダーの経験もある私がやさしく解説します!

ベタに塩水を用いるメリット

ベタ

熱帯魚の病気治療に塩水が有効だということを知っている方は多いかもしれませんが、ベタにおいては塩水を用いるメリットはそれだけではありません。

まずはベタ飼育に塩水を用いる2つのメリットを理解して、ベタ飼育に塩水を用いましょう!

塩水浴で病気の治療・予防に

塩水を用いるので一般的なのが、病気の治療で行う「塩水浴」です。

塩分濃度を一時的に上げることで、病気を治療するのが塩水浴ですね。

淡水魚に起こる病気の病原体も淡水域にのみ住むものがいるので、塩水によってそれを除去し、浸透圧の調整でベタ自身の体調も整えてあげるという仕組みです。

塩分に強い病原体もいますし、重度になると塩水浴では治らないので、すべての病気に有効なわけではありませんが、毒にもなる薬を使わないのでベタへのダメージが少なく、コストも安いので、病気の初期症状にはぜひ試してほしい治療法です。

飼育水の塩分濃度を上げて体調を整える

通常、淡水魚は淡水で体調を安定させ、海水魚は海水で体調を安定させるように体が作られています。

このため淡水魚は塩分のない水でも十分生活できるのですが、ベタの場合は少し違う理由で、塩分濃度が高いほうが体調を整えやすい場合があります。

ベタはタイ原産の魚で、改良ベタを作出する養殖場(ベタファーム)で養殖され育成してから出荷されるのですが、この養殖場の一部では、塩害の影響で井戸水の塩分濃度が高い場合があるのです。

つまり塩分濃度が高めの水で幼い時から育っているので、塩分濃度が高めの水質を好むというのが一つ。

もう一つが、改良された結果大きくなったヒレはなにかと傷ついてしまうことが多く、傷から体液が流出して体調を崩したり、傷から病気になってしまうことがあるのです。

その体液の流出をなるべく抑えてあげるために、塩分濃度をやや上げて、傷の治癒や病気の予防を助けるというわけですね。

これは塩水浴と違い、塩分濃度をやや下げて常時塩水を入れておくという方法です。

ベタに塩水を用いるときの注意点

メリットは紹介した通りですが、もちろんベタ本来の生息環境から考えれば離れた状態になってしまうため、やりすぎると負担がかかります。

また、ベタ以外にも注意してあげなければいけないポイントがあるので、以下のポイントに気を付けて塩水を利用しましょう。

塩分濃度に気を付ける

塩を入れる場合、まず注意したいのが塩分濃度です。

治療や体調維持に有効な塩も、入れすぎてしまうと逆効果です。

目的によって塩分濃度は変えますが、水分の蒸発によっても塩分濃度が変わるので、塩を入れた後も塩分濃度に注意しましょう。

蒸発によって減った水を補充すれば塩分濃度は維持できますが、入れる塩分濃度に合わせた塩分濃度計があるとより安心ですね。



突然塩分濃度を上げない

飼育水の塩分を変えるのは主に浸透圧を調整するためです。

塩を大量に口に含むと、口の中が突っ張った感覚になるのも、浸透圧が変わって口の中の水分が奪われるからですね。(危険なので試さないように)

ベタの場合は体表やエラで同様の状態になり、とても負担がかかっている状態です。

徐々に塩分濃度を上げれば体も徐々に順応するので、徐々に塩分濃度を上げるようにしましょう。

バクテリアへの影響を考える

水槽の中には、実はバクテリアがたくさん住んでいて、水を綺麗にする役割をになっています。

魚が水の中でフンをしても、このバクテリアたちのおかげでフンの毒素に魚がやられないというわけですね。

このバクテリアたちもじつは海水と淡水で種類が違うため、突然塩分濃度が変わると死んでしまいます。

ベタ自身強い魚なので、このバクテリアが弱ったからと言ってすぐに死ぬリスクは低いのですが、水が白く濁ったり、臭いが強くなったり、弱ったベタだと病気になったり死んでしまうリスクもあります。

それを避けるために、塩水浴の場合は別な容器で塩水浴を行い、飼育水の塩分濃度を上げる場合は、バクテリアに影響が少ないレベルの塩分濃度を心がけるといいでしょう。

水草や甲殻類(エビ)を入れない

ベタの水槽に水草を入れている場合、塩分濃度を上げるとたいてい枯れてしまいます。

塩分濃度が高くても耐えられる珍しい種類の水草であれば問題ないのですが、基本的には塩分濃度を上げる場合は水草は入れない方がいいでしょう。

また、エビも水質変化に弱いので、もしベタのタンクメイトにエビがいる場合は、別な水槽に移してあげるか、ベタを別な水槽に入れて塩を入れるといいでしょう。

水槽に使える塩

塩といえばまず調理に使うものを想像しますよね。

調理用の食塩にも水槽に入れられるものはたくさんありますが、入れない方がいいものもあります。

成分表を見て「天日塩」や「海水」のみ書かれているものは安心ですが、そのほかにも原材料が書いてある場合は要注意です。たとえばアジシオであれば「グルタミン酸ナトリウム」などと書かれていますね。

他にも海水魚飼育に使われる海水の元なども使えます。

簡単にそれぞれの特徴を紹介します。

食塩

食用に精製された塩。

海水をろ過し、煮たり天日で干したりして作られています。

価格も安いですし、それでいて塩水浴の効果が薄いということもないのでこれで十分でしょう。


海水の元

海水魚を飼育するときに、海水を再現するために使う観賞魚用品です。

精製された塩に、ミネラルなどを追加してより海水魚が好む海水を再現できるようになっていますね。

私は実感したことはないのですが、ミネラル分などを考え、飼育水に常時入れる場合には海水の元を好んで使用する方もいるそうです。


ベタの塩水浴の方法

では、実際にベタの塩水浴について解説します。

すべての飼育環境にあてはまるわけではないので、ベタに無用なダメージを与えないためにも、ここまで紹介したポイントも含め、ご自身の飼育環境に照らし合わせて判断して行うようにお願いします。

塩水浴が効果的な病気

  • 白点病
  • 尾腐れ病
  • 穴あき病
  • 便秘

いずれも初期症状であれば、塩水浴の効果があることが多いです。

重症となった場合には時間勝負となるので、即効性がある魚病薬を使用しましょう。

また、上記した病気を治療した後や、治療中においても、塩水浴と併用することで回復や治療の効果を大きくすることもできます。

詳しい治療法についてはチャームさんの公式サイトで紹介されているので、ぜひ一度目を通してから治療を始めることをおすすめします。

https://shopping.geocities.jp/chanet/archives/docs/fishdisease/

塩水浴に必要な塩分濃度と計算方法

治療目的で塩水浴を行う場合、塩分濃度は0.5%を基準にしてください。

もう少し高い濃度でも構わないのですが、蒸発して塩分濃度が上がってしまうことを考えて、安全マージンとして0.5%を基準にしましょう。

また、計算しやすいというメリットもありますね。

飼育水1リットルに対して5gという計算でOKです。ベタ水槽によくあるサイズの7リットルなら35g、10リットルなら50gです。

もちろん水槽の容量ではなく、実際に入っている水の量を基準に考えましょう。

塩水浴のやりかた

病気の種類を特定し、塩水浴が有効なのか判断して、水槽の水量にあわせて塩分量を計算しましょう。

その後、水槽の環境に応じて、水槽に塩を入れるか、別な水槽に移してから塩を入れるか判断してください。

レイアウトが多い場合や、タンクメイトが多い場合、水草をたくさん入れている場合は別な水槽とヒーターを用意した方がいいですね。

そうでない場合は、いつも入れている水槽のままでOKです。

塩を入れられる水槽を用意したら、計った塩をドバっと入れるのは厳禁です。

私は水槽の水を半分抜き、抜いた分量の新しい水を用意して、そこに計った塩を溶かして、徐々に水槽に流しいれています。だいたい30分もかけて少しずつ入れれば安心でしょう。

塩分濃度を上げた飼育水では、バクテリアの定着が遅くなる傾向にあります。

このため、水質の悪化でベタにストレスがかかるのを避けるため、できれば1日1回、半分程度の水換えを行いましょう。

このときも抜いた分の水に応じた塩を入れてから補充するので、水を抜くときにあらかじめ計っておくと安心ですね。

1リットル単位で抜けば溶かす塩の量も計算しやすくなりますね。

もし冬場など水の蒸発が激しい場合は、水を抜く前に蒸発した分の純水を補充しておくと、塩分濃度の上昇が抑えられます。

治療が終わったときも、突然純粋に戻すのではなく、徐々に塩分濃度を下げるようにしましょう。

下げるときは、1日1回の水替えで塩を溶かしていない水を入れていくだけなので簡単ですね。3~4日もやればほとんど塩分は抜けているでしょう。

飼育水の塩分濃度を上げておく方法

次に、ベタ水槽の飼育水の塩分濃度を常時高めにしておく方法です。

治療目的の塩水浴のようにシビアではありませんが、管理がずさんだと問題が出る場合もあるので、紹介するポイントを頭に入れて、日々の管理を行ってあげてくださいね。

体調を整えるための塩分濃度と計算

治療の場合、病原体を除去し浸透圧を上げるためになるべく高めの塩分量を入れましたが、体調を整える目的であればそこまで必要ありません。

これには明確な基準はないのですが、私の場合は1リットルに対して1つまみ程度で効果が出ています。

パーセンテージにすると、0.05~0.1%程度でしょうか。

これでも浸透圧は変わりますし、水の中のミネラル分も増えるので、ベタの体調に変化が現れることがあります。

ベタの様子を見て、状態がいいようならごく少量、もし発色が悪い、エサ食いが悪い、あまり動かないなどの症状があれば0.1%程度にしておくといいかもしれませんね。

健康維持のための塩分濃度のあげ方

まずは水草やエビなど塩分の影響で死んでしまう可能性のある生体を別な水槽にうつしてあげます。

治療と違い急がなくていいので、引っ越し先の水槽のバクテリアバランスなど環境を整えてから引っ越しさせてあげましょう。

上記した通り、健康維持のために塩を入れる場合、塩分濃度はかなり低いです。

このため、塩をそのまま水槽に投入しても、基本的にベタに影響はないです。

もし年老いたベタや、水槽が極端に小さい場合は、水に溶かして徐々に水槽に入れ、塩分濃度を上げる方法を取った方が安心でしょう。

注意するべきなのは、水の蒸発による塩分濃度の上昇です。

お味噌汁をなんども温めるとどんどんしょっぱくなるのと同じで、水槽の水も蒸発すると塩分濃度が上がってしまうというわけですね。

減った分の水を補充すれば塩分濃度は維持されるのですが、水替えのときは補充する水にも塩分を入れないと、どんどん塩分濃度が下がってしまいます。

なので、日々蒸発した分の水を継ぎ足して、水替えのときは抜いた分の水の量に、0.05~0.1gの塩を入れて補充してあげましょう。

まとめ

ベタの飼育では、塩を用意しておくと病気から体調維持まで対応できます。

ただし適当に入れればいいというものではなく、濃度や管理など、基本的なポイントは覚えてから実践してくださいね。

ちょっと面倒ではありますが、常時わずかに塩を入れておくだけで、ベタの調子が維持しやすくなるというのはあまりショップでも知られていなかったりするので、ぜひ覚えておくといいでしょう。

やさしい熱帯魚さんサテライトではこの他にもベタについての情報をたくさん紹介していますので、興味のある方はぜひまた遊びに来てくださいね!

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